1b2期の子宮頸がん。手術と放射線治療のどちらがよいか

回答者:上坊 敏子
社会保険相模野病院 婦人科腫瘍センター長
発行:2008年2月
更新:2013年12月

  

1b2期の子宮頸がんと診断されました。治療法はリンパ節郭清も行う外科手術(広汎子宮全摘出術)を勧められています。しかし、手術を受けると、リンパ浮腫や排尿障害などの副作用が起こる可能性があると、主治医から説明を受けました。心配になり、同じく子宮頸がんを経験したことのある知人に相談したところ、放射線治療が子宮頸がんにも効果があるという話を聞きました。さらには、放射線治療に抗がん剤治療を加えた化学放射線療法もあるということや、欧米では早期の子宮頸がんには手術よりも放射線治療のほうが行われているということも聞きました。治療成績や安全性、治療後のQOL(生活の質)などを考えると、手術を受けてよいものか、放射線治療、あるいは化学放射線療法のほうがよいのではないかと、悩んでいます。

(兵庫県 女性 53歳)

A 治療成績は同等。副作用はそれぞれ異なる

1b2期の子宮頸がんは、がんが子宮頸部にとどまっているものの、腫瘍径が4センチを超えている状態です。この進行状態の子宮頸がんに対する治療法は、日本では、一般的に手術が選択されています。とりわけ53歳という比較的若い年齢で、何らかの合併症がない人には手術が選択されることが多いと思います。欧米でも、1b期までなら、手術を行うことが珍しくありませんが、1b2期では放射線治療が選択されているようです。

わが国では、1b2期の子宮頸がんにおける手術と放射線治療の治療成績は、ほとんど変わらないと考えられています。ただし、放射線治療はどこの医療施設でも行えるわけではありません。放射線治療ができる専門医がいて、設備もそろっている施設で受ける必要があります。そうした施設であれば、放射線治療を選択するのもよいと思います。

手術を行うと、おっしゃるとおり、リンパ浮腫や排尿障害などが起こることがあります。では放射線治療には副作用がないかというと、決してそういうわけではありません。治療期間中には、たとえば下痢や不快感、倦怠感などが起きることがあります。治療が終わった後も、膀胱炎(長期にわたることもあります)が起こることもあるし、腸に放射線が当たると、炎症を起こし、それによって、下血や血尿、ひどい場合は腸の狭窄を起こすこともあります。慢性的な副作用は、手術よりむしろ放射線治療のほうが強いこともあります。また、放射線を当てると、腟が硬くなり、性行為がしにくくなることもあります。

何らかの障害や副作用は、手術にも放射線治療にも起こり得るのです。

またとくにアメリカでは、1b2期の子宮頸がんに対して、化学放射線療法がよく行われていて、治療成績もよいという報告が多数なされています。ただし、日本とアメリでは、放射線のかけ方が若干異なるので、同等の治療成績になるかは定かではありませんが、1b2期では化学放射線療法を行ったほうがいいという考えがわが国でも主流になっています。

子宮頸がんに対する化学放射線療法の治験は今、日本で幾つか行われています。結果は今後出てくるでしょう。ただ、放射線治療に加え抗がん剤治療を行うのですから、副作用はそれだけ強くなるし、費用も高くなることは免れません。

また質問文には、扁平上皮がんか腺がんか書いてありません。放射線治療は一般的に、扁平上皮がんにはよく効き、腺がんには扁平上皮がんほどは効かないといわれます。そのため、腺がんであれば、手術を選択する医師が多いと思います。重粒子線を用いた放射線治療であれば、腺がんに比較的効果があるといわれますが、特殊な治療なので、今はまだ一部の施設しか行っていません。

また、1b2期ですと、手術をした後に放射線治療を追加する必要が起きる場合もあります。そうなると、副作用がそれだけ多く現れることが十分考えられるため、患者さんの負担はいっそう大きくなります。もし手術を行った後に放射線治療が必要になることが予測できるなら、最初から放射線治療を選択したほうがよいかもしれません。

いろいろな角度からお答えしましたが、ご自分の状況を主治医に確認して、主治医と治療法をご相談ください。

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