子宮頸がんの1b期と診断。治療後の排尿障害が心配

回答者:関口 勲
栃木県立がんセンター 婦人科医長
発行:2005年6月
更新:2013年12月

  

子宮頸がんの1b期と診断され、治療として「広汎子宮全摘出術と骨盤リンパ節郭清をして、術後の病理診断でリンパ節転移があれば、放射線治療や化学療法を追加する。術後、排尿障害や足の浮腫がでることがある」と説明されました。実はすでに出産後から尿漏れがあり、治療後日常生活に支障をきたさないか心配です。患者仲間から「排尿障害が出ないように神経温存手術をする医師もいる」と聞きました。これはどんな手術ですか。

(神奈川県 女性 38歳)

A 放射線治療のほうが後遺症が少ない

子宮頸がんの治療には手術と放射線治療があります。1b期を対象に手術(手術のみ又は手術+術後放射線治療)と放射線治療とを比較した無作為化試験(97年)があります。この試験によると、手術と放射線治療では5年生存率は同じですが、後遺症の頻度と内容はかなり異なります。後遺症の頻度をある基準で見た場合、手術(28パーセント)のほうが放射線治療(12パーセント)の倍以上発症します。また、後遺症の内容では手術では神経因性膀胱、下肢浮腫、膀胱の合併症、水腎症などがメインです。一方、放射線治療では直腸炎が多くなります。この報告は、他の多くのデータと臨床経験から見て、納得できます。

また、放射線治療では卵巣に放射線が照射されるため、卵巣機能が消失し更年期障害が出ます。これらを考えて、年齢や個々の状況に応じて、治療を選択することが大切です。個人的には手術よりも放射線治療のほうが、後遺症が少なく、QOL(生活の質)も高いという印象です。なお、子宮頸がんには扁平上皮がん(全体の約80パーセント)と腺がん(約15パーセント)があります。腺がんは扁平上皮がんに比べ、放射線の感受性が低く、治療成績もやや悪いという報告もあります。この点も治療選択の際は考えてください。

一般的には、若い女性では卵巣機能の温存を考えて手術、40代後半以降の女性には放射線治療が望ましいと思います。ただしあなたの場合、尿漏れがあるとのことで、手術後、さらに排尿トラブルが悪化する可能性もあります。放射線治療では照射前に開腹あるいは腹腔鏡の手術で、卵巣を照射する場所から移動・固定させて、卵巣機能を温存させる照射法もあります。

神経因性膀胱をふせぐために神経を温存する手術は、まだ術式として確立されたものではないようですが、最近では多くの施設で神経の温存を心がけた手術を行っているようです。

広汎子宮全摘出術=子宮、子宮傍組織、膣、卵巣、卵管などを切除する手術。術後障害として、排尿障害、リンパ浮腫などが出る場合がある

神経因性膀胱=膀胱や尿道に通っている神経が不調になって起こる排尿障害のこと
水腎症=尿の流れが悪くて、主に腎盂が尿で膨れ上がって変形している症状

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