子宮頸がんの細胞診と組織診の結果が食い違うが?

回答者:上坊 敏子
社会保険相模野病院 婦人科腫瘍センター長
発行:2011年5月
更新:2013年10月

  

子宮頸がん検診を受け、細胞診でクラス3bという結果が出たので組織診を行ったところ、高度異形成と診断されました。円錐切除術を勧められたのですが、地元の小さな病院だったことと医師の対応に不安もあったので、もう少し大きな病院に移ることにしました。転院先で再度細胞診検査をするように言われ、結果はクラス2。少し様子を見ることになりました。3カ月後に細胞診・組織診両方の再検査をしたところ、細胞診はクラス1、組織診は高度異形成でした。主治医はクラス3の高度異形成でないため手術は躊躇されていますが、このまま様子を見ていていいのでしょうか。放っておいて、がんに進行しないでしょうか。

(北海道 女性 40歳)

A 高度異形成と診断された時点で円錐切除術をすべき

子宮頸がん検診で行われるのは細胞診です。細胞診で異常があれば、精密検査としてコルポスコープ(腟拡大鏡)検査をし、異常な部位から組織を採取して行うのが組織診です。

細胞診でクラス3b、組織診で高度異形成というのが1番ぴったり合った結果ですが、細胞診と組織診の結果は必ずしも一致するとは限りません。

子宮頸部病変における細胞診の結果を調べたところ、上皮内がんや高度異形成でも、クラス1または2、陰性と診断された患者さんが5パーセント前後いました。異形成の程度が軽い場合は、この頻度はもっと高くなります。

それでは組織診は完璧でしょうか? 細胞診でクラス3bでも、組織診では軽度異形成と診断されることがあります。細胞診が強く読み過ぎたか、組織を採取する場所がずれていた可能性が考えられます。組織診では組織を取る場所が少しでもずれていると、正しい診断がつきません。

子宮頸部と呼ばれる場所は非常に小さく、異形成や上皮内がんといった病変も非常に小さなものです。組織検査で病変部分を切り取ってしまうと、小さな病変は一時的に、あるいはそのまま消えてしまうことがあります。そうすると、その後の細胞診の結果は陰性となる可能性があります。完全に病気が消えたかどうかを確認するためには、細胞診とコルポスコープを使って経過観察を行います。経過観察の間隔は病気の状態によって変わりますが、完全に問題ないということになれば年1回の検診に戻します。主治医の説明をよく聞いて、経過観察をきちんと受けることが大切です。

ご相談者の場合ですが、たとえ細胞診でクラス1とか2でも、組織診では高度異形成の状態が続いているのですから、円錐切除術を行うのが一般的だと思います。高度異形成の約20パーセントががんに進行しますし、高度異形成と診断して手術を行った患者さんの標本に小さな上皮内がんがみつかることもあるからです。

もう1つ、ご相談者は転院するときに最初の医師から紹介状をもらったのでしょうか?

最初の医師からの紹介状とともに細胞診や組織診の標本を持参して転院することは、正しい診断と治療方針の決定に非常に役立つということを強調しておきます。

最後に細胞診という検査に見落としがあるということを知って、子宮頸がん検診に不信感を抱かれる方もいるかもしれません。子宮頸がんは、原因になるヒトパピローマウイルス(HPV)の感染からがんになるまでに最低でも5年はかかります。ですから毎年細胞診による検診を受けていれば、見落としによって子宮頸がんで苦しむ可能性は非常に低いといえます。

さらに確実な検診を受けたい方には、細胞診と一緒にHPV検査を受けることをお勧めします。HPV検査により、高リスク型HPVに感染しているかどうかがわかります。また、2つの検査を併用すれば、まず100パーセント異常を見つけることができますし、2つの検査が陰性なら3年後の検診で大丈夫です。

高度異形成=将来、子宮頸がんになる可能性のある前がん病変のこと。高度異形成から子宮頸がんへ進行するのは40パーセント程度

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