髄芽腫の放射線治療をやらせたくないが…

回答者:長谷川 大輔
聖路加国際病院 小児科医幹
発行:2013年8月
更新:2013年12月

  

娘(5歳)がCT(コンピュータ断層撮影)検査の結果、髄芽腫と診断されました。放射線治療と化学療法に入ると言われましたが、放射線による影響が心配です。やらない方法はないでしょうか?

(福岡県 男性 41歳)

A 予後を考えれば避けられないが、その後の総合的ケアが重要

髄芽腫は、年齢や髄腔内播種の有無、手術による腫瘍の摘出範囲によってリスク分けがされています。3歳以上で、播種がなく腫瘍がほぼ全摘された場合は低リスク、それ以外は高リスクに分類されます。

治療法は、手術・放射線治療・化学療法による組み合わせです。低リスクに対しては、腫瘍摘出後に化学療法と放射線治療が行われます。高リスクには、自家末梢血幹細胞移植を含むより強い化学療法と放射線治療です。

髄芽腫を含む多くの脳腫瘍に放射線治療は欠かせません。髄芽腫の場合は目に見えない微量の腫瘍細胞が髄液内に入り、播種を来たしていると考え治療を計画します。一般に、全脳全脊髄に18~24グレイ、さらに、腫瘍が存在する後頭蓋窩に32グレイ照射します。

娘さんは5歳とのことですので、治療成績が低下する危険を冒してまで放射線治療を省略する必要はないのでしょうが、照射量を検討する必要があります。効果と副作用について、担当医とよくご相談下さい。

放射線による治療は、晩期合併症が問題となります。主なものとして、認知機能障害、内分泌障害、2次がんなどが生じる可能性があります。そのため、とくに中枢神経の発達が著しい時期である3歳未満の乳幼児に対しては、放射線治療を省略ないし減量することが多く、その分は化学療法で補います。

総合的ケア(トータルケア)は小児がん一般に対して重要ですが、小児がん専門医、小児脳外科医に加え、小児の内分泌や神経の専門医、こころのケアの専門家、運動療法士、臨床心理士、さらにはソーシャルワーカーなどと一丸となったケアが、脳腫瘍においては必須です。

髄腔内播種=腫瘍細胞が脳脊髄液を介して脳表やクモ膜下腔、脳室内、脳槽内に進展・浸潤した病態 自家末梢血幹細胞移植=造血機能を廃絶させるくらい大量の抗がん薬を投与した後に、あらかじめ採取し凍結保存しておいた患者さん自身の末梢血幹細胞を投与し造血を回復させる治療法 後頭蓋窩=後頭骨および側頭骨錐体内後面からなる 内分泌障害=成長ホルモンや性腺刺激ホルモンの分泌低下など

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