小児がん治療後 どう支援するか?

回答者・長谷川大輔
聖路加国際病院小児科医幹
発行:2014年1月
更新:2014年4月

  

息子は、小脳の中心に発生する脳腫瘍(髄芽腫)で、5歳のとき入院。4度の手術後、化学療法と放射線治療を受け、7カ月後に退院しました。幼稚園に行くはずの5~6歳時は、自宅で療養。小学校入時は体力がなく、歩くのもやっとでした。

必死の努力で、周りの子供たちについていけるようになったのですが、小学校2年生になった今年、手術の痕を友達にからかわれ、「学校に行きたくない」とふさぎ込むようになりました。子供には、どのように接していくべきでしょうか?

また、こうした日常生活への復帰に伴う問題を相談できる専門機関などはありますか?

(43歳 女性 三重県)

学校側との連携は不可欠

聖路加国際病院小児科医幹の長谷川大輔さん

幼児期に長期の入院・療養生活を送るということは、子供にとって想像以上に負担の大きいものです。遊びたい盛りに遊べなかったり、がんの治療によって髪の毛が抜けたり、突然太ってしまったりなど、心理的なショックがトラウマを残す可能性も十分にあり得ます。

小児がん治療後の復学支援は、お子さんの年齢によってアプローチが異なる部分もあるのですが、重要なのは、学校(保育園・幼稚園も同様)側との情報共有をしっかりやることでしょう。フォローアップや協力体制を求めることで、園や学校での生活に移行しやすくなるためです。

当院では、入院していた小児患者さんが復学する際に、学校の校長や担任の先生、養護教員に来院してもらい、問題点を共有できるように努めています。

ご質問の方は、「手術の痕をからかわれた」ことがきっかけで、学校へ行く気力のなくなった息子さんを心配しておられるとのことですが、学校側と協議して、他の子供たちへの理解を促してもらうことは1つの対策になるかもしれません。

医療ソーシャルワーカーが学校との橋渡しになってくれることもありますので、1度、主治医にご相談されてはいかがでしょうか? 息子さんの心のケアに関しては臨床心理士や精神科医に相談していくのも、手段の1つでしょう。

小児がんのお子さんをケアする親御さんのお悩みやご苦労は想像を絶するものがあります。お母様が一人で抱え込むことがないよう、話を聞いてもらえる相手を見つけるといいでしょう。

つらい治療に耐え抜いて大変な病気を克服しつつある息子さんを、どうか大きな視点で見守ってあげてください。

髄芽腫=主に小児の小脳に発生する悪性脳腫瘍。原発性脳腫瘍の1・1%、小児脳腫瘍の12%と小児では3番目に頻度が高い。年齢別では、10歳以下の子に多く、3~4歳が発症のピークとされる。男女比は1・7:1と男児に多い

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