妊娠中、幼児期の喫煙と小児がんの関係は?

回答者・長谷川大輔
聖路加国際病院小児科医幹
発行:2014年1月
更新:2014年4月

  

娘は現在小学校2年生なのですが、妊娠がわかる6~7週までは、1日15本程度タバコを吸い、妊娠がわかった後も、1日5本くらい吸っていました。やっと止められたのは、妊娠8カ月になってからです。

娘はその後無事に生まれました。母乳があまり出ず、生後2カ月ほどでミルクに変えてから、また喫煙するように……。

1年程前に夫婦で禁煙したものの、今になって妊娠中と幼児期の受動喫煙を後悔しています。小児がんや、その後がんにかかりやすくなるなどのリスクは、高まるのでしょうか?

(31歳 女性 千葉県)

喫煙との明らかな因果関係はない

聖路加国際病院小児科医幹の長谷川大輔さん

喫煙と小児がん発症の因果関係は、いまの段階では明らかになっていません。

そもそもこうしたテーマを疫学的に研究する場合に、これから子供を生む男女を人為的に喫煙群と非喫煙群に割り付けて、5~10年後の子供の小児がん罹患率等を調査するといった「無作為割付試験」を行うことは倫理的にできません。

現段階でできるのは、小児がんに罹患した患者さんの両親の生活習慣などを遡る、「後ろ向き(レトロスペクティブ)研究」による調査なのですが、喫煙などに関する情報が自己申告という形で抽出されるため、正確な統計をとるのが難しく、エビデンス(科学的根拠)のあるデータとは言い難いのです。

妊娠前の父親の喫煙歴が、小児がんの発症と関係しているかもしれないというデータはあるのですが、それも5~6歳までの話なので、質問の方には該当しません。例えば、小児白血病の発症の機序には、体質やウイルス感染などの様々な要因が複雑に絡み合っているものと考えられます。同様に、白血病以外の小児がんにおいても、成人のがんのように受動喫煙などによる遺伝子の損傷の蓄積で発症するということではなさそうです。

しかし、両親の喫煙は乳幼児の突然死や、喘息、中耳炎などと関連があると考えられており、なによりもご両親自身の健康のためにも、禁煙をそのまま続けられたほうがよいと思います。

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