抗がん薬治療中に歯に痛み。「磨く」こと以外に治療は?
現在、大腸がんで抗がん薬治療中ですが、先日よりブリッジしている部分が少し痛み始めました。主治医からは「虫歯の場合、白血球が下がると悪化して痛みが出る。今は白血球が下がる時期ではないので、次回の抗がん薬治療が始まる前までに歯科に行って治療をしてもらったほうがいい」と言われました。ただ、近所の歯科医院で診てもらったところ、「歯周炎が考えられるので、まずはよく磨くこと」と言われ、とくに治療はしてもらえませんでした。抗がん薬治療中なので、今のタイミングを逃すと副作用が強くなり、ますます歯科治療を行えない気がするのですが、何か良い方法はないのでしょうか。
(56歳 女性 広島県)
A 歯ブラシで磨くことが最も有効な治療法
歯科医長の上野尚雄さん
歯周炎とは、歯の周囲の組織が細菌感染により炎症を起こした状態です。抗がん薬治療中は、このような口腔内の局所感染が非常に起きやすくなります。
歯周炎の治療の中心は炎症の原因である細菌を除去することにあります。そしてその除去する手段として、最も確実で身体に負担がなく、有効な治療法が「歯ブラシで口腔内(とくに歯肉周囲)を清掃すること」なのです。
受診した歯科医師は何も治療をしてくれなかった訳ではなく、指導された「歯ブラシで歯肉周囲をよく磨くこと」が最も重要な治療であることを、まずはきちんと理解することが大切です。
また歯周炎の管理は、継続が重要です。ブラッシングを怠ると、すぐに元の状態に戻ってしまいます。ですので「次の抗がん薬治療までに歯周炎を治す」という考え方ではなく、「がん治療中、継続して歯肉の感染を歯ブラシでコントロールし続ける」という考え方になります。
今まで〝歯磨き〟というと、虫歯予防やエチケットというイメージが強かったかもしれませんが、抗がん薬治療中の口腔の感染制御という点からは、歯磨きこそが自分自身で感染から身体を守る、最も有効な治療法です。しばらくの間は歯科医院で磨き方の指導を受け、歯肉の感染コントロールを続けてください。