S状結腸がんの、術後の補助化学療法は受けるべきか

回答者:大矢 雅敏
獨協医科大学越谷病院 外科主任教授
発行:2010年7月
更新:2013年12月

  

最近、66歳の母がS状結腸がんの手術を受けました。がんの大きさは5センチほどで、リンパ節転移はありませんでした。がんは腸壁の固有筋層の外にまで浸潤していて、ステージ(病期)2とのこと。術後の経過は順調です。お伺いしたいのは、術後の補助化学療法についてです。再発予防のために、補助化学療法は受けたほうがよいでしょうか。受けるとしたら、どんな補助化学療法がよいでしょうか。できるだけ、体に負担のかからない補助化学療法を希望します。ご意見をお聞かせください。

(岩手県 女性 35歳)

A 再発するリスクは約15パーセント。これをどう考えるか

S状結腸がんでステージ2、リンパ節転移なしということですから、国内では、手術をすれば、約85パーセントはそのまま治癒します。逆に言うと、再発するリスクは約15パーセントです。これをどう考えるかです。

昔は、S状結腸がんのステージ2に対して、飲み薬の抗がん剤を服用することもしばしばありました。しかし、実際には、術後の補助療法として抗がん剤を使用しなくても、ほとんどは再発しないので、内服薬によって抑制できる程度では、統計学的にはその効果は証明できないと考えられます。そこで、少し前から補助化学療法は行わないで、経過を見るのがふつうになりました。そして、再発したら、手術や化学療法などを行います。

ところが最近、欧米では、ステージ2の中でも再発率が高いグループを区別できるならば、そのグループに対して補助化学療法を行うという考え方も出てきています。

最新のガイドラインによると、欧米では、再発率が高いグループに対して、非常に強力なFOLFOX療法を実施する研究が行われて、再発予防に効果があったとされています。

FOLFOX療法は、5-FU(一般名フルオロウラシル)にアイソボリン(一般名レボホリナートカルシウム)、またはロイコボリン(一般名ホリナートカルシウム)、エルプラット(一般名オキサリプラチン)を加えて投与します。それ以外の薬では、再発予防に効果があることは示されていません。

国内では、多くの場合、強力な補助化学療法を行うよりは経過観察が選ばれていると思います。飲み薬を処方しようという医師もいると思いますが、気休めのためなら、経過観察だけにしたほうがよいと思います。

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