進行直腸がんで手術ができない。効果的な化学療法は?

回答者:吉田 和彦
東京慈恵会医科大学青戸病院 副院長
発行:2010年3月
更新:2014年1月

  

73歳の母のことで、相談です。かなり前から、便秘と下痢を繰り返し、体重もかなり減りましたが、病院に行くのを嫌がって、行きませんでした。やっと、近くの病院を受診しました。進行直腸がんで、手術はできないと言われました。化学療法しかないようです。幸い、歩くことはできます。母の楽しみは、自宅の庭の草花を育てることです。長生きをしてもらいたいと思います。そのために、少しでも効果的な化学療法を受けさせてあげたいと思います。ベターな化学療法を教えてください。

(福井県 女性 45歳)

A FOLFOX+アバスチンなど3つの治療法がある

手術ができないとしても、腸閉塞を起こさないように、人工肛門を造設してから抗がん剤治療を行うのが一般的です。骨盤内の病巣や骨転移などで痛み、出血、神経症状が生じている場合には、症状を緩和する目的で、放射線治療を行います。

米国の代表的な21のがんセンターによるネットワークのNCCN(米国包括がんセンターネットワーク)による抗がん剤治療のガイドラインは、進行転移大腸がんに対して、強い治療に耐えられる場合と、強い治療に耐えられない場合とに分けて、次のような化学療法を示しています。

強い治療に耐えられる場合の第1次治療の選択肢(ファーストライン)には、(1)5-FUの持続注入+ロイコボリン+エルプラットの3剤併用のFOLFOX療法に分子標的薬のアバスチン(一般名べバシズマブ)を加えた治療(2)5-FUの持続注入+ロイコボリン+トポテシンまたはカンプト(一般名塩酸イリノテカン)の3剤併用のFOLFIRI療法にアバスチンを加えた治療(3)5-FUの短時間注入+ロイコボリン+イリノテカンの3剤併用のIFL療法にアバスチンを加えた治療――の3つの治療法があります。すべてに分子標的薬が組み込まれています。最近では、最初から分子標的薬を加えた治療を行うのが一般的になっています。

第2次治療の選択肢(セカンドライン)として、KRAS遺伝子というがん遺伝子が正常な機能を有している遺伝子配列ワイルドタイプの場合には、FOLFIRIに分子標的薬のアービタックス(一般名セツキシマブ)を加えた治療や、アービタックスにイリノテカンを加えた治療法もあります。

強い治療に耐えられない場合には、飲み薬のゼローダ(一般名カペシタビン)単剤による治療や、ゼローダとアバスチンの併用療法、あるいは、注射による5-FUとロイコボリンの併用療法や、5-FU+ロイコボリン+アバスチンの3剤併用療法を行います。アバスチンを用いるときは、通常は短期間の入院が必要になります。

治療は、体力があれば、治療の反応を見ながら、薬の組合せを変えつつ続けます。

大腸がんに対する化学療法は、ここ10年間で非常に進歩しました。生存期間中間値は、12カ月程度から25カ月以上に延びており、かなりの延命効果が期待できます。

同じカテゴリーの最新記事

  • 会員ログイン
  • 新規会員登録

全記事サーチ   

キーワード
記事カテゴリー
  

注目の記事一覧

がんサポート5月 掲載記事更新!