直腸がんが肝転移。今後の望ましい治療法は?

回答者:吉田 和彦
東京慈恵会医科大学青戸病院 副院長
発行:2009年1月
更新:2014年1月

  

父(79歳)には、肛門から6センチの直腸に4センチのがんがあります。排便は可能で、出血はありません。しかし、肝臓に転移しているがんが5個あります。肝転移巣のがんは3センチが1個、2センチが2個、1.5センチが2個です。肝臓のがんは取りきれない状況です。望ましい今後の治療法を教えてください。

(長崎県 女性 52歳)

A 選択肢はいくつかある。それぞれの内容をよく理解して選択

このような患者さんの治療については、専門医の間でも議論が分かれます。

まず直腸がんの摘出手術を行うかどうか。将来的に腸閉塞を起こした場合、大腸穿孔(大腸に孔があくこと)による便性腹膜炎を起こし、致死的な状況になる危険性が高いため、かつては直腸がんの摘出手術が行われがちでした。しかし近年では、抗がん剤治療がかなり進歩し、効果が期待できるようになったため、直腸がんの摘出手術をせずにまず、抗がん剤治療を行うケースも増えています。その後の経過で腸閉塞を生じた場合には、緊急で人工肛門を造設する可能性が高まります。

仮に手術を行ったとしても、その後、抗がん剤治療を行うかどうかも議論は分かれます。抗がん剤治療をもし行うとすると、その場合の抗がん剤は、FOLFOX療法(+アバスチン)かFOLFIRI療法(+アバスチン)が勧められます。また、79歳という年齢や体力などを考慮すると、手術も抗がん剤治療も行わないという選択肢もありえます。

以上のような選択肢があることをお知りになった上で、主治医によくご相談ください。

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