化学放射線療法後に同じ場所に再発。今後の治療法は?

回答者:出江 洋介
都立駒込病院 食道外科医長
発行:2010年8月
更新:2014年2月

  

父(70歳)のことでご相談します。1年前に3期の食道がんと診断されました。手術か、抗がん剤と放射線の治療を主治医から提示され、悩んだ末に抗がん剤と放射線の治療を選択しました。治療を受けた結果、がんは消えたのですが、先日、同じ場所に再発していることがわかりました。主治医からは同じ場所に再発した場合、放射線治療は受けられないと言われましたが、父に今後、どのような治療法があるでしょうか。父はできれば手術以外の治療を希望しています。

(新潟県 女性 40歳)

A 粘膜下層深くにがんが進展していれば、手術が必要

再発したがんの大きさにもよりますが、粘膜にとどまるか、粘膜下層に少し入るぐらいのがんであれば、内視鏡的粘膜切除術(EMR)か内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)で取り除くことが可能です。ほかには、光線力学的療法(PDT)を行っている医療施設もあります。化学放射線療法後の再発は進展が早いことがあるため、治療の時期を逸しないように注意する必要があります。

「できれば手術以外の治療を希望している」とお書きですが、粘膜下層深くにがんが進展した場合は、がんを治すには手術が必要になります。この場合の手術はサルベージ手術といいます。

サルベージ手術とは、がんを根治する目的で化学放射線療法を行ったにもかかわらず、がんが消えなかったり、再発したりした場合に行う手術です。

この方は放射線治療などを受けた後ですから、体にはすでに大きな負担がかかっています。そのためサルベージ手術では、手術後の合併症によって亡くなってしまう危険性は一般の手術よりも高くなります。これを防ぐために、サルベージ手術は通常の手術よりもいっそう慎重に行う必要があり、がんの根治と手術の安全の両面をより重視して考えなくてはいけません。

具体的には、病変が明らかに残っている部位やがんが明らかに残っているリンパ節に限って取り除くなどの手術を行います。また、縦隔鏡や胸腔鏡を使用することで体への負担を小さくすることもできます。ちなみに当院では、そうしたサルベージ手術を行って、手術死はほぼゼロで、多くの患者さんが元気に退院されています。

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