大きさ1.5センチ、深さSM2のがん。治療法は?

回答者:出江 洋介
都立駒込病院 食道外科医長
発行:2010年8月
更新:2014年2月

  

胃の内視鏡検査で食道に異常が見つかり、その後受けた検査で、食道がんと診断されました。病期は1期で、腫瘍の大きさは約1.5センチ、深さはSM2です。検査を受けた病院では、手術を勧められました。しかし、だいたい同じような状態の食道がんになった知人は内視鏡で治療を受け、今は元気にしています。放射線と抗がん剤を併用する治療でも手術と同程度の治療効果があるようだと、その知人は言います。どの治療法が最もよいでしょうか。

(岐阜県 男性 61歳)

A 最近は内視鏡治療を行うことも

深さSM2の場合、基本的には手術を行います。少なくとも数年前までは、どの医療施設でも手術を選択していたと思います。

しかし現在では、がん治療を専門的に行っている施設では、内視鏡治療を行う場合もあります。当院でも、そういった患者さんが増えてきました。

ご相談者の場合、とくに微妙な判断が求められるのは、がんの深さがSM2である点です。

食道の内壁は内側から粘膜、粘膜筋板、粘膜下層、筋層などに分けることができます。SMはがんが粘膜下層にとどまっている状態で、粘膜下層を3等分して、浅いほうからSM1、SM2、SM3と分類します。

ご相談者はSM2と診断されていますが、これは内視鏡による診断で、正診率(正しく診断できる割合)は70~80パーセントです。逆にいえば、20~30パーセントは外れる可能性があるということです。内視鏡治療などで病変を切除してみたら、実際にはSM1だったということもありえます。

内視鏡治療を行い、仮にSM1で脈管侵襲がなければ、当院では、そのまま経過を観察します。この場合は、転移の可能性は低いと考えられるからです。

脈管侵襲とは、がんの周辺にある小さな血管やリンパ管にがんが入り込んでいる状態です。脈管侵襲が認められる場合はがんが転移している可能性が高まるため、原則としては、追加の治療が必要になります。

この場合の追加治療には主に、リンパ節郭清を伴う手術と、食道の周囲のリンパ節を含めた放射線治療があります。全国的には放射線治療を行う施設のほうが多いかもしれませんが、当院では、基本的には鏡視下による手術で対応していて、今のところ、100パーセント治癒しています。

施設や医師によって得意とする治療法が異なることもあるため、追加治療を受ける場合はそうしたことも主治医に確認するとよいと思います。

また、ご相談者がお書きのように放射線と抗がん剤による治療、あるいは、内視鏡治療に放射線と抗がん剤を加える治療もあります。これらの治療成績も良いのですが、治療後5年過ぎたあたりから、体調を崩す人が多く、再発の危険性もそれほど低くはありません。

「心臓の周りに水がたまる」「心臓の機能が低下する」「放射線肺炎を起こす」などの重い副作用が起こる場合もあり、それらによって亡くなる方もいらっしゃいます。

繰り返せば、このような症例での治療は、基本的には手術です。ただし、がんの専門施設では、まず内視鏡治療を行い、もしSM1だった場合は経過観察になる可能性もあり、内視鏡診断のとおりSM2か、それ以上深く浸潤していた場合は追加治療を行うというように、ワンステップ置く方法も増えてきました。

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