71歳義父が食道がん。後遺症を軽くできる手術方法を教えてほしい

回答者・出江洋介
都立駒込病院食道外科医長
発行:2009年12月
更新:2020年3月

  

71歳義父のことで相談です。食事をするとき、のどに違和感があり、近くの病院で食道の頸部に腫瘍が見つかりました。食道がんとのことで、義父は手術を受けるつもりでいます。ただ、手術後に、声が出にくくなるのではないか、食べ物が食べにくくなるのではないか、と気にしています。手術後の後遺症を軽くできる手術方法があったら、教えてください。

(富山県 女性 44歳)

食道入口部と腫瘍の間の距離によって治療法が異なる

都立駒込病院食道外科医長の
出江洋介さん

胸部食道がんは右開胸で食道の病変を切除し、胃で再建する治療法がほとんどですが、頸部食道がんは、病変の場所によって治療法は多少異なります。頸部食道がんの術式選択には、(1)喉頭を切除するかどうか(2)再建臓器として遊離空腸を使うか、胃を使うか―という2つのポイントがあります。

(1)は、食道入口部と腫瘍の間の距離が問題です。距離がある場合は、喉頭を残す手術を行い、声が残ります。距離が短いときは、放射線化学療法で腫瘍を小さくして、距離を離してから手術をすることもあります。この放射線化学療法で、腫瘍が完全に消えたケースもあります。当院では、シスプラチンと5-FU(一般名フルオロウラシル)、アドリアシン(一般名ドキソルビシン)の3剤併用で腫瘍を小さくして、次に、シスプラチンと5-FUの2剤に加えて放射線を併用します。頸部食道がんは胸部食道がんに比べ、この治療が効きやすく、約50パーセントの方が手術を行わずに完治しています。

腫瘍が食道入口部に近くて食道を残せない場合や気管浸潤がある場合には、気管の一部を含めて喉頭を切除して、永久気管口を作ります。喉頭を切除すると声は出なくなりますが、誤嚥性肺炎の危険性がなくなり、一概に悪いことばかりとは言えません。

(2)は遊離空腸を使えば胃が残るため食事摂取には有利です。手術は切除の範囲や剥離して取り除く範囲が広ければ広いほど患者さんへの負担が大きくなります。遊離空腸を用いると縦隔(胸の中)の剥離がない分、小さな手術ですみます。ただ、この再建手術には血管吻合が必要で動脈硬化が強いと吻合した血管がつまりやすく、血管がつまると人工的につなげた空腸は壊死し、命にかかわります。そこで、最終的には、食道を抜去して、胃を持ち上げる再建手術が必要なときもあります。また、放射線化学療法をした場合、放射線の影響で、血管がつぶれてしまうこともあります。こうしたときにも、胃を用いた再建手術をします。胃は再建臓器としては安全性が高く、壊死することはほとんどありません。ただし、胃を用いた再建手術をすると胃の機能は基本的にはなくなります。

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