2センチの食道がん。糖尿病の持病があるが治療法は?
数年前からときどき食物を飲み込むときにつかえるような感じがありました。最近、近くの病院で検査をしたところ、食道の中央近くに、2センチほどの食道がんが見つかりました。ステージ2のようです。長年、糖尿病と高血圧に苦しんできました。糖尿病の影響で、腎機能も少し衰えています。軽い家事などは何とかできています。手術を予定していますが、糖尿病という持病があるため、少し迷っています。できるだけ身体に負担のかからない治療法にしたいと思います。アドバイスをお願いします。
(青森県 女性 68歳)
A 術前化学療法を行わずに、根治手術を
食道がんの大きさが2センチで、ステージ2とのことですから、粘膜下層から筋層に入るぐらいのがんで、リンパ節転移もそれほど高度ではないと予想されます。
現在、私たちの施設では、こうした病期に対して、術前化学療法をしてから根治手術を行っています。JCOG(日本臨床腫瘍研究グループ)は、術前化学療法後に根治手術をした場合と、手術後に化学療法を行った場合を比較した臨床試験を行いました。この臨床試験で、前者のほうが5年生存率は20パーセントほど良くなることが示唆されました。術前リンパ節転移が明らかでない方や、狭窄の強い方を除いて、術前化学療法を行うようにしています。
術前化学療法後は、食道周囲の組織が通常の食道がんよりも多少ベタベタした感じがありますが、手術自体が特別やりにくくなることはありません。通常の手術と同じです。
この術前化学療法では、抗がん剤のブリプラチン(またはランダ/一般名シスプラチン)を使用します。この抗がん剤には、腎毒性があります。相談者は、糖尿病のために腎機能が低下しているとのことですから、術前化学療法は行わずに、根治手術を行うのがよいと思います。
食道がんの治療は、体に負担がかかることはある程度避けられませんが、少しでも負担を軽減するために、私たちは鏡視下手術で行っています。胸腔鏡と腹腔鏡を使用して行う手術です。ステージ2の5年生存率は89パーセントと良好です。
糖尿病と高血圧の合併症を持っている場合には、手術のリスクが高くなります。糖尿病と高血圧のほかに、心機能や呼吸機能も含めて、全身状態をよく評価してから治療方針を決定されるのが良いと思います。