慢性肝炎を持つ胸部食道がんの治療法は?

回答者:出江 洋介
都立駒込病院 食道外科医長
発行:2008年7月
更新:2013年10月

  

食道の中央近くに、がんがあり、胸部食道がんと診断されました。がんの深さは浅く、ステージ1とのことです。私は、C型肝炎ウイルスに感染し、慢性肝炎も患っています。飲酒を控えて、肝臓が悪くならないようにしてきました。慢性肝炎を抱えながらの食道がんの治療では、どんな治療法がよいですか。なるべく身体に負担のかからない治療法を教えてください。

(神奈川県 67歳 男性)

A 鏡視下手術が第1選択

慢性肝炎があっても肝機能が著しく悪くなければ、基本的な食道がんの治療方針は変わりません。ステージ1とのことなので、粘膜がんT1aでリンパ節転移があるか、粘膜下層がんT1bでリンパ節転移がないかのいずれかになりますが、手術が第1選択と考えます。私たちの施設では鏡視下手術で行います。肝臓が悪いときは、胸管を温存します。胸管は、小指の半分ほどの太さの管で、食道の横を走っています。誰もが持っている管で、リンパ液が流れています。胸管の周囲の組織にはがん細胞があることも少なからずあり、進行がんの手術では、一般的に胸管も取り除きます。しかし、胸管がなくなると、リンパ液の流れが悪くなって、肝臓への負担が大きくなります。そこで、胸管の周囲のがん細胞を丁寧に取り除いて、胸管は必ず残すようにしています。

リンパ節転移の診断が迷うようなときは、EMR(内視鏡的粘膜切除術)で主病巣を切除してから、追加治療を行うかどうかを検討するという方法もあります。

近年、放射線化学療法も良好な成績をあげていますが、晩期有害事象の問題があります。ステージ1の手術成績は非常に良好で、当院の鏡視下手術の5年生存率は89パーセントです。ですから、現時点では鏡視下手術をお勧めします。60歳代と若い方なら、手術を受けられたほうがよいと思います。

C型慢性肝炎は、肝がんの発生率が高くなります。そのため、食道がんの手術後のフォローアップでは、肝臓の機能と共に肝がんの発生がないかどうかも注意深くみていくことが大切です。

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