ステージ1の食道がん。治療法は?

回答者:出江 洋介
都立駒込病院 食道外科医長
発行:2008年2月
更新:2013年10月

  

会社の定期検査で食道の中央の胸部食道に腫瘍が見つかりました。紹介先の病院で検査を受けたところ、腫瘍の大きさは直径3センチほどで、ステージ1の食道がんのようです。手術を勧められています。かなり大がかりな手術になりそうです。できれば、身体に負担のかからない手術や、化学療法などを選びたいと思います。治療法のアドバイスをお願いします。

(栃木県 53歳 男性)

A 第1選択は、鏡視下手術

大きさ3センチでステージ1とのことですから、粘膜がんでリンパ節転移が軽度のT1aN1、もしくは粘膜下層まで入っているがリンパ節転移のないT1bN0のいずれかだと思います。

ステージ1の標準治療は手術です。手術の中でも、胸腔鏡と腹腔鏡を操作して行う鏡視下手術がよい適応となります。腹部に7センチの傷と1センチの穴を5カ所、胸部には5センチの傷と1センチの穴を5カ所開けて行います。医師5名と看護師2名で行います。医師は、腹部と頸部を担当する2チームに分かれて、手術に取り組みます。かなりの経験が求められます。手術時間は7時間ほど。通常の開胸手術よりも傷が小さく、早期に社会復帰ができます。

当院では、ステージ1の5年生存率が86パーセントです。この鏡視下手術が可能な施設は全国でもある程度限られます。手術で亡くなった方はゼロで、安全です。

第2選択は、化学放射線療法です。治る可能性は十分にあります。ただし、放射線照射による晩期障害が心配です。晩期障害で亡くなっている方もいます。ですから、当院では、第1選択は、鏡視下手術です。

また、ステージ1でも大きなリンパ節転移があるときなどは、術前化学療法を行ってから手術をすることもあります。術前化学療法後に手術をすると、術後に合併症を発症する確率が高くなるともいわれていますが、当院では、必ずしもそういうことはありません。ですから、メリットがありそうだと思われる場合には、術前化学療法を行ってから手術をするという方法もあります。

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