TS-1の服用を副作用で中止。今後どうすればよいか

回答者:出江 洋介
都立駒込病院 食道外科医長
発行:2008年2月
更新:2013年10月

  

夜中に呼吸が苦しくなり、近くのクリニックを受診しました。その結果、直径4センチの腫瘍が食道をふさいでいることがわかりました。そこで、紹介先の病院で、長時間の手術を受けました。手術中にお腹に腸瘻を造り、術後はそこから栄養剤を補給しました。退院後は、TS-1(一般名テガフール・ギメラシル・オテラシルカリウム)という飲み薬を服用しながら仕事を続けましたが、吐き気や、下痢などの副作用に悩まされて、服用を中止しました。幸い、体調は戻りつつありますが、再発への不安も多少あります。このまま、何もせずにしていてよいのでしょうか。術後の対応について、教えていただければと思います。

(三重県 49歳 男性)

A リンパ節転移の状況で対応方法は多少異なる

大きさが4センチで、食道が狭窄していたとのことですから、がんが食道の壁を貫いて外に出ている状態(T3)だと推察されます。この状態だと、90パーセント以上がリンパ節転移を伴っています。再発リスクもあります。

そこで、根治的な手術をしたあと、術後補助化学療法を行います。シスプラチン(商品名ブリプラチンまたはランダ)と5-FU(一般名フルオロウラシル)の併用療法が標準的です。5日間入院して点滴治療を受けて3週間休み――という治療を2回行っています。

ご相談者は、何らかの事情で、TS-1を服用して、副作用で中止されたとのことですから、シスプラチンと5-FUの併用療法を試みるのもよいと思います。

なお、TS-1と5-FUは同系統の薬剤ですから同じような副作用が出る可能性があります。そこで、シスプラチンと5-FUの併用療法の副作用が強い場合には、抗がん剤の量を通常の80パーセントほどに少なくするなど、量を調節します。また、入院治療なら薬剤を用いて、副作用を十分にコントロールすることが可能です。

もう1つ、3カ月ごとのCT検査で経過観察をして、再発したら治療を行うという選択もあります。肺転移の場合は、シスプラチンと5-FUの併用療法が第1選択です。

すでにこの治療を行っていたときには、タキソテール(一般名ドセタキセル)とアクプラ(一般名ネダブラチン)の併用療法などを行います。肝臓転移の場合も肺転移と同じ治療を行います。肝動注化学療法を行うときもあります。

とくに、全身化学療法で腎障害などの有害事象を起こした方には、肝動注だけ行います。

リンパ節に再発した場合で、それが局所的なときは、シスプラチンと5-FUの併用化学療法と放射線治療の併用、もしくはタキソテール単独に放射線治療を併用する2つの化学放射線療法のいずれかを行っています。

手術で取ってきたリンパ節にどの程度転移があったかなどによって対応方法は多少異なります。

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