0期で外科手術を勧められているが、ほかの治療法を希望

回答者:安藤 暢敏
東京歯科大学市川総合病院 副院長
発行:2007年9月
更新:2013年10月

  

先日、胃の調子が悪く、受診しました。胃の内視鏡検査を受けたところ、胃には異状は見られなかったのですが、0期の食道がんが認められました。0期の食道がんは通常、内視鏡でがんを切除すればほとんど治るといわれましたが、私の場合は、がんが広がっているため、外科手術を勧められています。初期のがんということなので、できれば手術は避けたいと思っています。内視鏡での治療や化学放射線療法、あるいはレーザー治療などでは治らないでしょうか。また、セカンドオピニオンを受けてみたいのですがいかがでしょうか。

(愛媛県 54歳 女性)

A 内視鏡的粘膜切除術と外科手術のほかには、放射線治療がある

「内視鏡での治療」というのはEMR(内視鏡的粘膜切除術)のことだと思います。0期の食道がんに対する治療は、このEMRが標準治療です。これは、内視鏡で病巣を観察しながら、がんを含めて粘膜を切除する治療法で、患者さんの身体的な負担は非常に軽いといえます。

EMRが適用になるのは0期です。がんの大きさは通常、2センチ×2センチまでです。ただしこれは、1回の治療で切除できる範囲で、取り切れない場合には、何回かに分けて切除することもあります。

質問文には、「がんが広がっているため、EMRではなく、外科手術を勧められている」旨が書かれていますが、具体的にどの程度広がっているかわかりません。たとえば、食道全周にがんができていると、EMRを行った場合、治療後に食道に狭窄を起こしてしまうことがあります。もしかして、主治医はそうした状況を踏まえ、外科手術を勧めているのかもしれません。

また、0期の食道がんは、組織学的にいうと、がんが粘膜筋板までにとどまっている状態です。しかし、当初は0期と思っていても、がんが広範囲に広がっている場合には、よく調べてみると、実はがんが一部で粘膜筋板を越えているケースも散見されます。そうした状況を踏まえ、医療施設や医師によっては、0期であっても、確実を期すために、EMR以外の治療法を勧めることもあります。

0期の食道がんで、EMRが難しいと判断された場合の標準治療は、現状では、外科手術です。

ただし現在、0期・1期でEMRが適応にならない場合、外科手術と化学放射線療法(抗がん剤治療+放射線治療)のどちらがより有効なのか、2つを比較する臨床試験が行われています。その結果によっては、化学放射線療法が外科手術に取って代わる可能性も十分にあります。また現時点でも、EMRが難しいと判断した場合、化学放射線療法を勧める施設はたくさんあります。

レーザー治療も挙げていらっしゃいますが、レーザー治療を食道がんに行う施設はかなり限られています。

外科手術を希望されないのでしたら、セカンドオピニオンを受けてみるのもよいと思います。化学放射線療法や、場合によってはEMRの可能性も出てくるかもしれません。

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