肝転移のある4期の食道がん。手術は受けられるか?

回答者:安藤 暢敏
東京歯科大学市川総合病院 副院長
発行:2005年6月
更新:2013年10月

  

67歳の父が食道がんと診断されました。肝臓とリンパ節に転移のある4期だそうです。現在、5-FUとランダによる治療を受けています。主治医は今後、放射線治療も行って、効果が見られれば、食道と肝臓の切除手術をすることを考えているそうです。しかし、父のようにがんが進行している状態で、このような大がかりな手術を受けても問題ないのでしょうか。また、手術による治癒の可能性はどの程度あるのでしょうか。

(北海道 41歳 男性)

A 通常、手術は行わない。放射線も十分な検討が必要

結論から言いますと、肝臓に転移がある食道がんで、化学療法後に肝臓と食道を切除する手術を行うことは通常考えられません。

肝臓に転移があるがんの場合、肝臓の転移巣の切除術をするかどうかは、がん種によってある程度決まってきます。食道がんの場合は、化学療法が効いても効かなくても、一般的に手術は行いません。

たとえばこれが、大腸がんから肝臓に転移したとすると、手術も検討されてよいでしょう。というのも、大腸がんは一般的に対応しやすいがんですし、手術も食道がんに比べると体力的に負担が少ないからです。また、腸閉塞を防ぐ意味からも、手術が検討されてよいでしょう。

しかし食道がんは、大腸がんと違って、手術が非常に大がかりです。胸もおなかも開ける大手術になりますから、患者さんの身体的な負担もかなり大きくなります。

こうした現状を踏まえ、食道がんで肝臓に転移のある場合は、手術は適応にならないのが現在の標準的な見解です。

また、今後、放射線治療を受けられる予定と書いてありますが、こちらも問題になる場合があります。

食道がんで肝転移のある場合、放射線治療を行うのは、化学療法で肝臓のがんが消えた場合です。その場合は、原発巣である食道に放射線を当てることがあります。ただ、食道がんの肝転移には、肝臓以外の転移巣に比べ、化学療法が効きにくいのが現状です。

肝転移のがんが消失したとしても、放射線治療が最も妥当な治療法というわけではありません。肝転移があるということは、がんが全身に広がっていることを意味しますから、局所治療である放射線治療で治癒に至るとは考えにくいからです。

この方の場合も、肝転移したがんが認められなくなったら、放射線治療を行うのも1つの方法ですが、一般的には、5-FU+ランダもしくはブリプラチンなどの化学療法を引き続き行うのが妥当な選択です。

手術に至っては非常識と言ってもいいくらいの見解です。セカンドオピニオンを受けられることをおすすめします。

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