2期の食道がん。放射線単独での治療を受けたいが……

回答者・安藤暢敏
東京歯科大学市川総合病院副院長
発行:2005年6月
更新:2020年3月

  

58歳の母のことで相談します。先日、食道下部のがんと診断されました。がんの大きさは6センチで、ほかの部位への転移はなく、ステージは2です。主治医からは、手術か、放射線+抗がん剤による治療のどちらかを選ぶことを勧められています。体への負担ができるだけ軽い治療にしたいので、手術は避けようと思います。抗がん剤を使わず、放射線単独では治らないでしょうか。

(新潟県 34歳 女性)

手術を選ばないのであれば、放射線化学療法が妥当

東京歯科大学市川総合病院
副院長の安藤暢敏さん

放射線単独での治療を希望されていますが、食道がんに対する治療は、放射線単独より、放射線治療に抗がん剤治療を加えた放射線化学療法のほうがより効果のあることがわかっています。これは、米国の比較試験で明らかになり、1992年に発表されています。実際、治療に当たっている私の実感でも、このことは痛感しています。

ですから、手術を受けないのであれば、体力的に問題がない限り、放射線化学療法を受けられたほうがよいと思います。58歳の女性の場合、特別に体力が衰えていないのであれば、通常、放射線化学療法を受けても問題ありません。

データを少し紹介しますと、1期の食道がんの場合、放射線化学療法でがんが1度は消失する割合は80パーセント以上あります。しかし、そのうちの約40パーセントは再発しています。それで、4年生存率はおよそ80パーセントです。治療成績としては、これはとても優れています。

2期と3期の中期進行食道がんに関する放射線化学療法のデータは、ごく1部を除くとまだ出ていません。

手術は希望されていないようですが、食道がんの手術についても少し説明してみましょう。

1期の食道がんで手術を受けた場合の5年生存率は、専門病院での平均で80パーセント弱です。4年生存率と5年生存率の違いはありますが、これらのデータから、1期に関しては、手術と放射線化学療法の効果はほぼ同程度であることがわかります。

1期の食道がんに関しては、今後、さらに本格的な比較試験が始まります。2期と3期の食道がんに関する比較結果は、放射線化学療法のデータが十分でないため、まだほとんど出ていません。

いずれにしても、ご相談者の場合、手術を受けないのであれば、放射線化学療法を選択されることを奨めます。

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