手術後の化学療法は受けたほうがよいのか?

回答者:安藤 暢敏
東京歯科大学市川総合病院 副院長
発行:2005年6月
更新:2013年10月

  

食道がんの3期と診断され、受けた手術は幸い成功しました。主治医の先生から、今後、抗がん剤治療をしたほうがよいと言われましたが、副作用などが心配なため、できれば受けたくないのですが…。

(福岡県 60歳 男性)

A 術後の化学療法を行ったほうが再発率が下がる

3期の食道がんというと、リンパ節に転移があります。リンパ節に転移のある食道がんの場合、手術の後に抗がん剤の補助療法を加えたほうが、再発予防効果があることが比較試験の結果、明らかになりました。

ですから、特に体力的に問題がないようでしたら、術後の抗がん剤治療は受けられたほうがよいでしょう。60歳の男性の場合、一般的には、術後に抗がん剤治療を受けてもとくに問題ありません。

再発予防効果をもう少し詳しく説明すれば、1つには再発が少なくなる効果です。また、仮に再発するにしても、その再発を遅らせることが期待できます。これらの結果、当然、生存率も上がります。

食道がんの補助療法として使う抗がん剤は、5-FU(一般名フルオロウラシル)とランダもしくはブリプラチン(一般名シスプラチン)の2剤併用が第1選択になります。場合によっては、この2剤にアドリアシン(一般名ドキソルビシン)を加えることもあります。アドリアシンを加えると、副作用はその分、強くなります。

ちなみに欧米では、食道がんに対する補助化学療法は、手術の後ではなく、手術の前に行うのが一般的です。欧米ではさらに、術前に放射線化学療法を行うことが増えていて、今ではこれが主流になりました。

術前に化学療法を行うのは日本ではまれで、まして術前の放射線化学療法となると、一部の施設で行われているのみです。術前と術後のどちらに化学療法を行うのがより再発を少なくすることができるかの比較研究は、今私たちが進めているところです。

ご相談者の質問に戻りますと、副作用を軽減する方法もありますから、体力的に問題のない限り、抗がん剤治療を受けられたほうがよいと思います。

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