手術と化学放射線治療の治療成績は同じと聞いたが
父(65歳)のことでご相談です。食道がん(扁平上皮がん)の2~3期と診断されて、手術を受けることになりました。しかし、がん患者の会で「化学放射線治療の治療成績が手術と同じ程度」だということを聞きました。担当医に相談すると「うちでは手術しか行わない」と言われました。手術しなくてもよいのであれば、身体への負担の少ない化学放射線治療を選択させたいと思っています。アドバイスしてください。
(福島県 42歳 男性)
A 治療成績は同程度だが特有のデメリットもある
ご指摘のように、化学放射線治療を積極的に推進中のがん専門病院の治療成績では食道がん(2~3期)への化学放射線治療と手術の治療成績は同程度です。ただし、全国的には5年生存率などの正確な治療成績はなく、同程度とは言い切れません。現在、全国の多施設で共同臨床研究中です。
また、化学放射線治療だから身体への負担は少ないとは必ずしも言えないように思います。化学放射線治療も副作用があります。自覚症状として、倦怠感や食欲不振、吐き気、脱毛などがあります。目に見えないものとしては、白血球や血小板の減少なども起こります。さらに、治療を終わってから1~3年後に、放射線による晩期毒性が現われます。肺への酸素の取り込みが悪くなる肺腺維症、肝臓組織に炎症の起こる肝臓炎、胸に水がたまる胸水などが起こることがあります。
欧州では食道がん(2~3期)に術前化学放射線治療を最初に行って、効果のある場合はそのまま化学放射線治療を継続し、効果のない場合は手術を行って、両者の治療成績を比較した結果、両者の生存率に差はなかったというデータが発表されています。そのため、現在、欧州では術前化学放射線治療が主流になっています。しかし、治療を受ける前に、「この人には化学放射線治療は有効だが、この人には無効だ」と、遺伝子診断などで前もってわかればありがたいのですが、残念ながらまだ有効な方法は見つかっていません。
化学放射線治療のさまざまな問題点を踏まえて、食道がんの専門医にセカンドオピニオンを求めることをお勧めします。