手術による発声や摂食ヘの後遺症が心配

回答者:出江 洋介
都立駒込病院 食道外科部長
発行:2013年4月
更新:2014年2月

  

食事をするとき、のどに違和感があり、病院に行くと胸部食道がんのⅠ期と診断されました。手術後に、声が出にくくなるのではないか、食べ物が食べにくくなるのではないか、と気がかりです。Ⅰ期でも手術は必須ですか? ほかの治療法は選択できませんか。

(東京都 男性 62歳)

A 化学放射線療法も手術と同等だが、鏡視下手術が第1選択

JCOG9708という大規模臨床試験で、Ⅰ期の食道がんに対する化学放射線療法の4年全生存率は80.5%という結果が出て、手術と同等という位置づけになっています。

ただ、私たちの施設ではⅠ期の食道がんに対しては低侵襲(患者さんの負担が少ない)な鏡視下手術を行っており、5年全生存率は96.9%となっています。手術の場合は、声がかれる合併症が12%の方に見られます。QOL(生活の質)を落としてしまいますが、症状は3カ月くらいで回復します。

また、食物の摂取は1年ほど苦労します。手術関連の死亡は0%です。

化学放射線療法の問題点は、放射線食道炎、放射線肺臓炎、甲状腺機能低下症、心嚢水・胸水貯留、心機能低下などで、肺と心臓の問題から治療後数年して命にかかわる場合があります。

このような状況から、当院ではⅠ期の方には第一に鏡視下手術をお勧めしています。手術は確かにその時には体の負担になりますが、一時的に加わる負担というものがかなりあっても、そこを乗り越えると回復に向かっていきます。

放射線治療は、さしあたっては大きな負担ではありませんが、長期的な弊害が心配です。何年か経過してから2次発がんという問題もあります。治る患者さんについては、手術をすべきだという考えです。

ただし、「たいへんなことはしたくない」という患者さんのお気持ちとして手術を希望されない場合は、化学放射線療法が有力な選択肢となります。

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