高齢者の下咽頭がん。手術を勧められたが?

回答者:林 隆一
国立がん研究センター東病院 頭頸部腫瘍科形成外科科長
発行:2013年2月
更新:2013年11月

  

87歳になる父についてご相談します。父は喉に痛みがあり、病院で検査をしてもらったところ、リンパ節転移が疑われる下咽頭がんであることがわかりました。医師からは喉頭を温存した下咽頭の部分切除と小腸を使った再建手術を勧められていますが、本当にこれが父にとって良い治療なのでしょうか?

(東京都 女性 56歳)

A 提案の手術は勧められない

下咽頭とは喉の1番下の辺り、喉頭の後面にある上部消化管にあたる場所で、その治療では嚥下や発声機能などの保持が必要となります。

ご相談者は喉頭を温存した治療法を提案されているようですが、この場合、声が温存できるというメリットはありますが、切除範囲によっては誤嚥など嚥下障害が残るリスクがあります。

とくに高齢者の場合は元々、嚥下機能が低下しているため、年齢を考慮するとあまりお勧めできません。術後の誤嚥による肺炎の発症の危険性も十分考えられるからです。

声を残す治療として他に化学放射線治療があります。しかし、年齢を考慮すると化学療法を併用することは難しいと思いますので、放射線治療単独での治療となります。この場合、進行具合によっては十分な治療効果が得られない可能性があります。

下咽頭がんは初診時すでに進行している場合が多く、下咽頭・喉頭を全摘出する方法が多く行われます。声を温存することはできませんが、治療の確実性は高く、この術式では誤嚥の問題はなくなります。

最近では、機械を使った代用音声も発達しているので、そちらも治療の選択肢として考えてみることも良いかと思います。高齢者における治療は体力を考慮し、リスクとベネフィットを理解した治療が大切となりますので、主治医と相談して最善の治療法を選んでください。

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