腎盂がんの膀胱内再発。治療や今後について聞きたい
1年前に主人(63歳)に腎盂(じんう)がんが見つかり、左の腎臓と尿管を全て切除しました。がんは筋層にまで浸潤していたため、術後に*GC療法を行ったものの、先日、膀胱にがんが見つかりました。主治医からは、再度手術をしてがんを切除する旨、説明がありました。手術をして、化学療法も行い、本人も治療に前向きに取り組んできただけに、新たながんが見つかってかなり精神的に落ち込んでしまっています。今回は内視鏡を使った手術ということですが、大がかりな手術になるのでしょうか。膀胱にがんができた場合、再発率が高いとも聞き、今後についても心配です。
(61歳 女性 京都府)
A 再発率は約3~4割。定期的なチェックとリスクに応じて膀胱内注入療法を
腎泌尿器外科部長の古賀文隆さん
腎盂、尿管、膀胱は同じ粘膜でできていて、尿路上皮がんと総称され、とくに腎盂・尿管にできたがんを上部尿路上皮がんと言います。上部尿路上皮がんの場合、たとえ手術を行ったとしても、患者さんの約3~4割に膀胱内再発を来すとされていて、この膀胱内再発は、術後2~3年以内に起こることが多いです。
なぜ膀胱内に再発しやすいかというと、尿の流れを考えるとわかりやすいです。尿は腎臓で作られて、腎盂や尿管を通って膀胱に溜まりますが、通り道である腎盂や尿管にできたがん細胞も、尿と一緒に膀胱に移動し、そのまま長時間膀胱に停留することによって膀胱粘膜に付着し、再発する形式が多いと考えられています。
膀胱にいったん腫瘍ができた場合、まずは経尿道的膀胱腫瘍切除といって、尿道から内視鏡を挿入して、電気メスで腫瘍を削り取ってくる手術を行います。膀胱にできたがんには、筋層非浸潤がんと筋層浸潤がんと大きく2つに分かれますが、上部尿路上皮がんの膀胱内再発の場合、大部分が筋層非浸潤がんに相当します。
再発率や筋層浸潤がんへ進展する(悪性進展)リスクは、原発性の膀胱がん(筋層非浸潤がん)と同等と報告されており、約半数が再発し、再発していくうちに約10%が悪性進展するとされています。そのため、ご相談者のように、膀胱にがんが確認できた場合、定期的な膀胱内再発のチェックが必要と同時に、がん細胞の顔つきなど再発リスクに応じて再発予防のために、*BCGや*マイトマイシンによる膀胱内注入療法を行います。
また、ご心配されている内視鏡下手術ですが、通常、半身麻酔で行い、手術時間も20分程度で終わります。入院期間も4~5日前後でそれほど大がかりなものではありません。
*GC療法=ジェムザール+シスプラチンの2剤併用療法 *BCG=疾病を生じないよう弱毒化したウシ型結核菌のこと
*マイトマイシン=一般名マイトマイシンC