透析腎がんだが、両腎臓摘出しても問題はないか

回答者・古賀文隆
がん・感染症センター都立駒込病院腎泌尿器外科部長
発行:2017年7月
更新:2018年2月

  

11年前から腎不全のために人工透析をしていますが、今年(2017年)に入ってから、両方の腎臓にがんが発症しているとの診断を受けました。主治医からは、両腎臓ともに全摘する旨、説明を受けています。腎臓があまり機能していないとは言え、両方の腎臓を摘出しても大丈夫なのでしょうか。人工透析をしていると腎がんになりやすいとは言われていましたが、やはり不安です。

(68歳 男性 鳥取県)

尿産生の能力がなければ、問題はない

がん・感染症センター都立駒込病院
腎泌尿器外科部長の古賀文隆さん

腎不全で透析をしている場合、腎がん発症率は非常に高く、健常な人と比べてそのリスクは100倍と報告されています。そのため、透析している人の場合、年に1~2回、超音波検査などで、腎がんが発症しているかどうかを確認します。

一般的に、透析している人に腎がんが見つかった場合、治療の基本は根治的腎摘除になります。長期にわたる透析で、腎機能がほぼ廃絶して尿を産生する能力がない場合には、両方の腎臓を摘出しても問題になることはほとんどないと考えられます。ただ、我々は尿を排出することで水分バランスをとっているので、尿を出すことができないとなると、ある程度の水分摂取の制限が出てきます。したがって、まだ尿の産生機能がある場合には、両方の腎臓を摘出することで尿を排出することができなくなるので、体内の水分バランスを保つために、より厳しい水分摂取の制限が必要となってきます。

ご相談者のように11年間透析されていると、尿を産生する能力はなくなっている場合が多く、両方の腎臓を摘出することによる身体的デメリットは、とくにないと考えられます。ただ、長期間透析を受けている人は、高血圧症や心筋梗塞、脳梗塞など、併存症を持っていることが多く、できるだけ身体に優しく安全な低侵襲手術を行うことが重要です。

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