エコーで見えない小さな再発。治療法は?

回答者・石井 浩
がん研有明病院消化器内科 ペプチドワクチン療法担当副部長
発行:2014年2月
更新:2014年5月

  

67歳の母は、40歳代のころにC型肝炎に感染。2年前に肝臓にがんが見つかり、外科手術で切除しました。ところが2カ月前、肝臓に2つの肝腫瘤が見つかりました。1つの肝腫瘤は、大きさが1㎝の再発、もう1つは、数㎜で再発の疑いがあると説明されています。

前者はラジオ波焼灼療法で治療し、後者は経過観察がとられています。このまま経過観察していて大丈夫なのでしょうか。大きくなるのではないかと心配です。

(42歳 男性 香川県)

まだ治療する段階ではない

がん研有明病院消化器内科 ペプチドワクチン療法担当副部長の石井 浩さん

まず、2つの肝腫瘤ですが、ご相談者の場合、その原因は2種類想定されます。1つは2年前に切除した肝細胞がんからの転移再発、もう1つは2年前のがんとは全く別の新しい肝細胞がんの発生です。前者が狭義の再発で、後者は多中心性発生といいますが、区別はなかなか難しいので、両者を併せて(広義の)再発と呼ばれます。

狭義の再発(転移)の場合は進行が比較的速く、また画像で見えない小さな転移がほかにもあるかもしれないため、2つまとめて血管塞栓化学療法が推奨されることが多いと思います。一方、多中心発生の新たな発がんの場合は、ミリレベルの肝腫瘤は前がん病変である可能性も十分に考えられます。

この方の治療のように、まずは画像で肝細胞がんが確実と考えられる腫瘤をラジオ波焼灼療法で処置し、ミリレベルの肝腫瘤のほうは様子をみるというのは、極めて妥当な判断だと思います。小さな前がん病変の肝腫瘤は、経過観察中に消失してしまうこともありますし、本当のがんに成長するまで数年かかることもあります。少し大きくなったとしても、1㎝のときの治療成績は2㎝のときと変わりありません。

肝細胞がんはとても再発しやすいがんです。そして、肝細胞がん治療はいずれも肝臓に負担をかけ、体力を落とす可能性があります。生涯つきあっていく病気になりますので、焦らずじっくり観察し、機が熟したときにより効果的な治療が受けられるよう、主治医とよく相談しましょう。

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