4㎝の肝細胞がん。ラジオ波焼灼療法は無理か?
母(72歳)が肝細胞がん(1個、大きさ4㎝)と診断されました。主治医からは、手術を勧められていますが、より体への負担が少ないラジオ波焼灼療法を選ぶことができないかと思っています。ラジオ波焼灼療法が受けられるのは、基本的にがんの大きさが3㎝以内ということですが、母のような場合、やはりラジオ波による治療は受けることはできないのでしょうか。
(43歳 女性 兵庫県)
A ラジオ波の治療も可能。手術とラジオ波焼灼療法の利点、欠点を検討して選択を
小池幸宏さん
一般的にラジオ波焼灼療法の適応はがんの大きさ3㎝以下、個数は3個以内と言われています。ただ、実際には3㎝を超える肝細胞がんに対してラジオ波焼灼療法を行っている施設もあり、当施設でも治療を行っています。ですので、ラジオ波での治療ができないということはありません。手術とラジオ波焼灼療法、各治療法の利点と欠点をご本人やご家族がよく理解した上で、治療を選択すべきと思います。
手術の場合の利点とは、目で見てそこにあるがんを切除するので、基本的にはほぼ100%がんが取り切れるということです。ただ、欠点としては2点あって、1点目は肝細胞がんの再発率は高く、手術で取り切れたとしても、再発する可能性があること。2点目は、肝臓の手術は比較的大きな手術になることがあるので、とくにご高齢の場合、がんは治ったけれども、体力が落ちてしまうケースがあることです。
一方、ラジオ波焼灼療法の場合、利点としては、一般的に合併症を起こさなければ手術と比べてはるかに体への負担も少なく、患者さんの体力も落とさなくてすむことがあげられます。ただ欠点としては、再発率の問題があげられます。ラジオ波での治療の場合、目で見て腫瘍部位を切除する手術と違って、超音波機器で患部を確認しながら針を刺し、針から発生させた熱の力でがんを死滅させます。従って腫瘍が大きくなればなるほど、治療後にがんが残存する可能性が出てきます。再発率は施設や、がんが存在する位置によって異なりますが、4㎝の大きさのがんの場合、数%から多くても20%以内の確率であります。
ただ、最近ではラジオ波焼灼療法で使う針にも新しいものが出てきており、今までは3㎝の球体の範囲に熱が伝わるものが使われてきましたが、最近では3.5㎝とさらに広い範囲に熱を伝えることができるようになってきています。また、針を肝臓に3本刺して、5㎝といった広い範囲を焼灼することも可能になり、工夫によってはラジオ波焼灼療法で治癒できる可能性も高くなってきています。
他にも、手術以外で体への負担が少ない治療ということであれば、陽子線治療や重粒子線治療の選択肢もあります。ただし保険診療ではないので、250~350万円という高額な治療法になる旨、注意も必要です。