再三の肺近くのラジオ波焼灼療法は適切か?

回答者・石井 浩
がん研有明病院消化器内科 ペプチドワクチン療法担当副部長
発行:2014年2月
更新:2014年5月

  

C型肝炎をもっており、2年前に肝細胞がんが見つかりました。ラジオ波焼灼療法で治療しましたが、3カ月前に肺の近くに再発し同じ治療法を受けました。さらに1月前にも、ほぼ同じ箇所に2つの再発が見つかり、ラジオ波焼灼療法を行いました。このときも幸い、がんを焼き切ることができたそうです。

同じ場所へ3度目の再発をする可能性も高いとのことで、主治医からは、「次に同じ場所に再発した場合は、肺に穴を開けて水を注入し、肺を持ち上げてラジオ波焼灼療法を行う方法をとる」と言われました。このような方法は一般的なのでしょうか。危険ではないかと心配です。ラジオ波以外に適切な治療法はないのでしょうか。

(67歳 女性 大阪府)

人工胸水法という確立した手技

がん研有明病院消化器内科 ペプチドワクチン療法担当副部長の石井 浩さん

お尋ねの方法は人工胸水法です。横隔膜直下の肝細胞がんは、肺が邪魔でがんがよく見えず、ラジオ波焼灼療法が困難なことがあります。よく見えない状態でラジオ波焼灼療法を行うと、肺を損傷しないよう慎重を期すると焼き残しが生じやすくなり、逆に焼き残しを作らないように力を入れると肺まで焼いてしまう危険があります。

人工胸水法はこれらの危険を回避する工夫です。「肺に穴を開けて水を注入」するのではなく、胸腔に針をさし、肺と肝臓の間に水を注入します。本邦では多くの施設で行われている確立した手技であり、危険は僅少といえます。

ラジオ波焼灼療法以外で考慮される治療は、局所効果がより確実である肝切除術です。しかし、ご経験のように肝細胞がんはしばしば再発します。再発のたびに再手術は負担が大きいので、今回は負担の軽いラジオ波焼灼療法でよかったかもしれません。

しかし、ラジオ波焼灼療法の焼き残しは難治性の再発になることがあります。このような場合はラジオ波焼灼療法に固執せず、可能であれば救済的な肝切除を考慮します。血管塞栓化学療法や粒子線療法を考慮する状況もありえますが、どれが最善かは資料を揃えて専門家と相談する必要があります。

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