大動脈周囲のリンパ節に転移。ネクサバールしか治療法はないか

回答者・小池幸宏
関東中央病院消化器内科部長
発行:2015年7月
更新:2015年10月

  

父(67歳)が4年前に肝細胞がんで手術をしましたが、昨年(2014年)12月に大動脈周囲のリンパ節に転移が見つかり、ネクサバールの服用を始めました。しかし徐々に腫瘍が大きくなっており、主治医からは血管を傷つける恐れがあるので、処置が難しいと言われています。このままネクサバールを飲み続けるしか治療法はないのでしょうか。

(41歳 女性 島根県)

放射線治療や他の薬物療法の可能性も。ただしネクサバール中止判断は慎重に

関東中央病院消化器内科部長の
小池幸宏さん

ご質問文から詳しい内容が分かりませんが、お父様の状態として、リンパ節に転移はしているけれども、肝臓内には再発していないという前提でお答えいたします。

現状では肝臓以外にがんが転移した場合、エビデンス(科学的根拠)のある有効な治療法は、ネクサバールしかありません。ネクサバールには、腫瘍を小さくさせる効果はあまり期待できませんが、腫瘍の大きさを一定期間横這いに保ったり、あるいは大きくなるスピードを抑えることで、結果的に生存期間を延長させることが確認されています。従って、命を長らえるという意味では、現状ではネクサバールを続けていくことが良いかと思います。

ただ、他にも治療法がないわけではありません。例えば肝細胞がんのリンパ節転移に対して、放射線治療なども実際に行われています。ただ、大動脈周囲のリンパ節転移ということで、周囲に胃や腸など大切な臓器が存在するので、周辺臓器への照射をどれだけ避けて治療できるかが重要です。その点、最近ではサイバーナイフといって、よりがんに限局して放射線が強く当てられる治療方法もあります。また他にも薬物療法として、UFT内服や5-FU+シスプラチンの点滴もあり、保険適用として認められています。

これらの治療法は、大規模臨床試験で必ずしも有効性が認められたわけではありませんが、治療効果があったという患者さんの例はたくさん報告されています。従って、ネクサバール以外にも放射線治療や他の薬物療法も含めて検討する余地はあると思います。各治療法の利点、欠点があるので、専門の医師にセカンドオピニオンを聞きに行くと良いかと思います。

ただ1点注意も必要です。現在、がんが徐々に大きくなっているということですが、ネクサバールを止めると、がんが急速に大きくなる、あるいは他の部位に転移する可能性もあります。ですので、安易にネクサバールの服用を止めるという判断は、場合によっては危険です。副作用の問題がなければ治療を続けながら、他の治療法を並行して行うという考え方もあります。そういった点も含めて、今後の治療法を検討されると良いかと思います。

ネクサバール=一般名ソラフェニブ UFT=一般名テガフール・ウラシル 5-FU=一般名フルオロウラシル
シスプラチン=商品名ブリプラチン/ランダ

同じカテゴリーの最新記事

  • 会員ログイン
  • 新規会員登録

全記事サーチ   

キーワード
記事カテゴリー
  

注目の記事一覧

がんサポート4月 掲載記事更新!