肝硬変が悪化。がん治療はもうできないのか
父(69歳)はC型肝炎→肝硬変→肝臓がんという経過を辿っており、3年前に1㎝大のがんを見つけては再発を繰り返し、これまで肝動脈塞栓術を2度ほど行っています。先月に入って腹水が溜まり出し、肝硬変が悪化し、これまで治療を受けていた病院から、これ以上がんの治療はできないと言われました。ただ、先日の検査でまた小さながんが見つかりました。肝硬変が悪化している場合、やはりがん治療は難しいのでしょうか。
(44歳 女性 群馬県)
A 状況によっては治療ができる可能性も。1度専門施設に相談を
小池幸宏さん
このご質問文だけで判断するのは難しいのですが、基本的に肝がんは他のがんと異なり、がん治療を考える際に❶技術的な面から、がんそのものが治療可能かどうか❷がん治療を行うことで肝臓に負担がかかってしまうので、負担がかかり過ぎないかどうか、この2点を考える必要があります。がん治療によって肝臓に負担をかけ過ぎてしまうと、場合によっては肝不全を引き起こしてしまう可能性があるからです。
がん治療を行っていく際には、肝障害度を評価するスコア、「チャイルドピュー(Child-Pugh)分類」が、1つの目安になります。これは、肝硬変の程度を点数化して、肝機能の良いほうからA、B、Cと分けて評価するもので、一般的に最も悪いCと判断された場合、がん治療の適応はないとされています。
また、この方は腹水が溜まり出しているということですが、色々な薬剤を使うことで、腹水をコントロールすることができる人もいますが、残念ながらコントロールできない場合、がん治療の適応はないと考えられます。他にも、黄疸の原因であるビリルビンの数値が3㎎/dL以上の場合も、一般的にはがん治療の適応にはなりません。
ご相談内容を見る限りでは、通われている施設でがん治療の適応がないと言われたのは、一般的な考え方であり、大きく考え方が外れているわけではないと思います。ただ、これはあくまでもガイドライン上のものであり、個々の患者さんの状況やがんの状況によっては、がん治療が必ずしもできないとは限りません。
例えば、ラジオ波焼灼術であったり、サイバーナイフといった腫瘍部分だけに放射線を照射する治療法、あるいは肝動脈塞栓術でも、がんに栄養を与えている血管のすぐ側までカテーテルを挿入して塞栓するといった方法で、肝臓への負担を最低限にとどめることで治療が可能になることもあります。従って、この方にがん治療の適応が完全にないかどうかは、この文章を拝見するだけでは判断できかねます。専門の施設に、1度ご相談されることをお勧めします。
また、一般的に適応にならないかもしれませんが、C型肝炎に対しては新たな薬剤が登場し、ほとんど副作用がなく、服用するだけで治療ができるようになってきています。以前のようなインターフェロンを用いる治療だと、かなり進行した肝硬変の場合、治療自体に耐えられないケースもあったのですが、今であれば、ほとんど負担もかからず、C型肝炎の治療が可能になってきています。そういったことも含めて、検討されると良いかもしれません。