手術は避けたいため ラジオ波治療を検討したいが
81歳の父ですが、肝臓に腫瘍が見つかりました。S7区域に2.5cmの大きさのものが1つあるとのことです。高齢のため、本人には手術を受けることに躊躇があり、地元の病院の主治医からはそのような場合は、抗がん薬治療を選ぶことになると言われました。インターネットで調べたところ、ラジオ波焼灼療法(RFA)という治療法もあると知りました。どのような治療なのでしょうか。また、父の場合にも可能なのでしょうか。通院先の病院では受けられないようですが、どのように治療を決めたらいいでしょうか。
(55歳 男性 鳥取県)
A ラジオ波焼灼療法でも 同様の効果が期待できる
小池幸宏さん
肝がんの治療は、たとえ同じようながんの状態でも、肝臓の力(予備能)がどれくらいあるかによって、治療方針は異なってきます。ご質問の患者さんについては、ウイルス性肝炎の感染やアルコール摂取などのがんの要因や肝臓の状態が不明なのですが、すでに手術による治療も検討されているため、肝機能が良好な81歳の男性患者さんとして回答します。
高齢患者さんの場合は、肺炎などの手術による合併症のリスクが高く、術後の体力低下によるデメリットが強く感じられがちです。それらを避けるため、手術ができる肝がんであっても手術を受けない選択をする高齢患者さんは一定数おられます。
ただ、手術を選択しない場合でも、通常は、ラジオ波焼灼療法や肝動脈塞栓術(TAE)が検討され、化学療法による治療のみしか選択できないということは、まずありません。
ラジオ波焼灼療法というのは、超音波機器で患部を確認しながら、肝臓の腫瘍に針を刺し、針から発生させた熱の力でがんを死滅させる方法です。適応は一般的に、3cmまでのがんが3個以内と言われています。さらに、最もよい適応は、2.5cmぐらいまでのがんです。
相談の方の場合は2.5cmのがんが1つということですから、ラジオ波焼灼療法によって手術に匹敵するよい効果が得られます。治療自体は数10分間ほどで、おそらく翌日には歩くこともでき、1週間以内に退院できるでしょう。体力への負担も最低限に防ぐことができますので、ラジオ波焼灼療法という選択は十分検討に値します。
ただ、ラジオ波焼灼療法は、全国的に広く行われている治療法ですが、必ずしもどこの施設(病院)でも受けられるわけではありません。その点、肝動脈塞栓術は多くの施設で行われています。
肝がんは肝動脈という血管から栄養を含んだ血液を多量に得ていますが、肝動脈塞栓術は、カテーテルというチューブをがんの近くの血管内に導き、がんを栄養している血管に栓となる物質を詰めるものです。これによりがん細胞は栄養が得られなくなり、壊死します。
以前は、肝動脈塞栓術によって完全な治療効果を得るのは難しかったのですが、現在は治療器具の進化や治療者の技術の向上によって、治療効果が格段に上がっています。そのため、2.5cmのがんであれば、完全な治療効果が得られる可能性も高いです。
手術を希望しない場合でも、体への負担が少なくて確かな治療効果が得られる、他の治療法を選べる場合があります。地域の肝がんの専門医を一度受診して、説明を受けてみてはいかがでしょう。
2療法とも、術者による技術の差が比較的顕著です。お住まいの医療圏の中で治療を受けるのであれば、その施設が得意とするどちらかの治療法を受けるというのが、実際には効果的なのではないかと思われます。