オプジーボで重篤な副作用が出るのは何故?
免疫チェックポイント阻害薬のオプジーボ(一般名ニボルマブ)で重篤な副作用が何故、出てくるのか教えてください。
(77歳 男性 東京都)
A リンパ球が働き過ぎて正常細胞を攻撃するから
呼吸器内科学分野教授の久保田さん
オプジーボの、がん細胞に対する効果の仕組みついて考えてみましょう。
がん細胞が壊れると、がん抗原(こうげん)が血液中に出てきます。このがん抗原を樹状(じゅじょう)細胞が食べます。すると樹状細胞はリンパ節に流れて行って、リンパ球の一種であるT細胞にがん抗原の情報を教えます。
情報を受けたT細胞は血管を通ってがんの近くに行き、毛細血管内側の細胞の間を通って出てきます。出てきたT細胞が、がん細胞の表面に出ているがん抗原を認識し、がん細胞を破壊するのです。
T細胞にはPD-1というリンパ球の働きを抑える受容体(レセプター)、車でいえばブレーキの装置があります。免疫の働きが強くなり過ぎると問題なので、そのような装置が付いているとお考えください。このPD-1というブレーキを踏むペダルに相当するのが、PD-L1というタンパク質です。T細胞の攻撃を受けたがん細胞は、PD-L1を出してT細胞の動きを止めてしまいます。
オプジーボは、がん細胞が出すPD-L1に蓋をするような働きがあり、がん細胞が出すPD-L1の働き(作用)を阻害して(止めて)しまいます。
このように、オプジーボはリンパ球の働きを抑えるPD-1の作用を阻害することになり、リンパ球が働き過ぎてしまうことがあります。がん細胞のみならず、正常細胞を攻撃した場合にみられるのが、オプジーボの副作用、免疫関連の有害事象です。
とくに生命に関わる正常細胞にリンパ球の攻撃が及んだ場合に、重篤(じゅうとく)な副作用が出現することがあります。重篤な副作用の代表として間質性(かんしつせい)肺炎、腸炎、Ⅰ型糖尿病、重症筋無力症などがあります。
しかし、重篤な有害事象はそれほど頻度が高いわけではありません。また、有害事象が出た患者さんのほうが効果も出やすいという傾向があります。
オプジーボはがん細胞には直接作用するわけでないので、もともとリンパ球の働きが落ちている方の場合は、そもそも効果もなければ、副作用もないということだと思います。