タグリッソが効かなくなった後の治療法は
2019年11月、咳が頻繁に出るので風邪だと思い、近所のクリニックを受診しました。間質性肺炎を起こしていると診断され、薬を処方されて経過観察を続けていました。2020年3月ごろから息苦しさがひどくなり、4月に入って総合病院を紹介されました。検査の結果は肺がん、がんの大きさは2.4㎝ほどでリンパ節と骨に転移がありステージⅣ、余命2~4年と宣告されました。
5月に大学病院に転院してタグリッソの投与が開始され、7月にCTとPET検査の結果、リンパ節と骨の転移が改善され、肺のがんの縮小も認められました。しかし、主治医からはタグリッソの効果が続くのは1年と言われ不安が募っています。タグリッソの効果がなくなった後の治療法についてお教えください。
(63歳 男性 神奈川県)
A ABCP療法を推奨します
呼吸器内科学分野教授の久保田さん
EGFR陽性の肺がんに対する第3世代薬タグリッソ(一般名オシメルチニブメシル)の効果については、第1世代薬であるイレッサ(同ゲフィチニブ)またはタルセバ(同エルロチニブ)との比較試験が行われ、効果がなくなるまでの期間の中央値が、第1世代が10.2カ月に対してタグリッソは18.9カ月と明らかに改善しました。イレッサでも、効果が数年続く方もおられます。タグリッソは初回治療として使われるようになってまだ2年ちょっとですので、長期効果については、イレッサより良好なことが期待されますが、まだ十分なデータは少ないのが現状です。
EGFR陽性肺がんは、EGFR陰性に比べ細胞傷害性の抗がん薬の効果も少し高いのです。反対に免疫チェックポイント阻害薬単独の効果は低いのです。しかし、EGFR陽性肺がん患者を対象に行われた臨床試験では、化学療法に比較して、化学療法と免疫チェックポイント阻害薬との併用は効果が高まりました。ですからタグリッソの効果がなくなった後の治療には、この試験で用いられた*ABCP療法が推奨されます。
*ABCP療法=アデゾリズマブ(商品名テセントリク)+ベバシズマブ(同アバスチン)+カルボプラチン(同パラプラチン)+パクリタキセル