副作用が強そうで乗り気がしない
75歳の男性です。2017年5月、自治体の検診で肺がんを指摘され、大学病院でステージⅠBと診断され、左肺下葉を切除しました。術後、再発したため、キイトルーダ+アリムタ+シスプラチンを4クール行いました。腎機能が低下してきたので、2019年11月から2020年5月にかけて、キイトルーダ+アリムタに変更し4クール行いました。
しかし、同年11月、腫瘍マーカーが上昇したため、キイトルーダを再開しました。
2022年3月、左肺上葉に残っていたがんが増悪、縦隔リンパ節への転移も確認されました。主治医からは次にタキソテール+サイラムザを提示されていますが、副作用が強そうなのであまり気乗りがしません。経過観察の間に、がんが進行していく可能性はありますか。高齢なのでがんの進行は遅いのではないかと思いますが。
(75歳 男性 神奈川県)
A タキソテール単独という選択肢も
呼吸器内科学分野教授の久保田さん
主治医から提示されているタキソテール(一般名ドセタキセル)+サイラムザ(一般名ラムシルマブ)は、タキソテール単独と比較した臨床試験が海外で行われ、生存期間が有意に改善したため、他の化学療法が行われた非小細胞肺がんに対する標準治療の1つとなりました。
しかし、生存期間中央値の改善は1.4カ月程度とあまり大きなものではありません。また、高齢者ではほとんど差が認められませんでした。日本でもタキソテール+サイラムザ併用とタキソテール単独とのランダム化(無作為化)比較試験が行われました。
副作用についてですが、抗菌薬の投与が必要な発熱性好中球減少の頻度は、併用群34.2%、単独群19.8%でした。その他、血小板減少、口内炎、肝機能障害、鼻出血、高血圧などの頻度が併用群で増加しています。タキソテールは白血球減少や脱毛、倦怠感などの副作用がある薬剤です。抗がん薬を使わない場合に比較して、生存期間や肺がんに伴う症状の改善効果が示されています。
「経過観察の間にがんが進行していく可能性」ですが、「がん」は進行していく病気なのです。これまでの経過でも増悪していますので、進行することは確実だと思います。ただ進行の速度は人それぞれです。年齢の影響は肺がんの場合、少ないようです。
ご相談者の75歳という年齢を考慮しますと、タキソテール単独という選択肢が勧められます。