前立腺がん治療 手術か放射線治療か

回答者・亀山周二
NTT東日本関東病院副院長・泌尿器科部長
発行:2013年8月
更新:2015年2月

  

限局性の前立腺がんと診断されました。今後は手術、または放射線治療を行うということです。放射線治療は副作用も少なく、効果は手術と同じであると聞きましたが、どちらを選ぶべきなのか迷っています。放射線治療だけで、本当に治るのかが不安だからです。また、多くの前立腺がん患者さんは、どのように治療を選択されているのでしょうか。その状況も教えてください。

(埼玉県 男性 69歳)

A 副作用や生活スタイルなど総合的な判断を

前立腺がんの根治的な治療としては手術、あるいは高線量の放射線治療が適切な治療です。どちらを選択されるかは、患者さんのご意向が大切になってきます。

放射線治療の割合は日本ではまだ少なく、手術と放射線治療の割合はだいたい4対1といったところでしょうか。

ご相談者の場合、他の部位に転移がなく、かつ前立腺内でもがんが進行していないということで、比較的早期の前立腺がんと診断されたようですね。

手術、あるいは放射線治療を行うことで治癒の可能性が高いといえ、どちらの治療を選択しても生命予後には差は無い、といえます。

手術の方法は、8~9cmほどの小切開で開腹して行う方法、腹腔鏡下手術、ロボット補助手術での方法があります。入院期間は、7~10日間です。

手術の合併症としては、尿失禁と勃起不全が代表的です。尿失禁については、術後数カ月はパットを使いますが、ほとんどの場合、1年くらいで改善します。勃起不全の対策として、術中に神経温存という方法がありますが万全ではありません。

現在、放射線治療は、従来の放射線治療装置であるリニアックではあまり行われていません。リニアックでは線量を70グレイ以上かけると前立腺のすぐ後ろにある直腸へダメージを与え、直腸出血や潰瘍などの重大な合併症を起こしてしまう可能性があるからです。

前立腺がんの放射線治療では、だいたい72~78グレイのかなり高い線量をかけなければがん細胞を死滅させることは難しいとされています。前立腺だけにターゲットを絞って周辺の臓器(主に直腸)にダメージを与えないための、高精密度治療として重粒子線治療や陽子線治療、IMRT(強度変調放射線治療)などがあります。

重粒子線治療や陽子線治療は保険がきかないので一般的ではありませんが、IMRTは保険がきく治療で、周辺の臓器に害を及ぼすことなく、前立腺に高線量の照射が可能です。

現在ではIMRTによる治療が多くなっています。ラジオアイソトープを前立腺がんの患部に埋め込んで放射線を照射する小線源治療もありますが、早期で病巣が小さいものに適応が限られています。IMRTは、全国の大学病院、がんの拠点病院ではかなり普及しています。

放射線治療の副作用では、尿失禁の心配はあまりありませんが、勃起不全は生じる可能性はあります。放射線治療は、通院での治療が可能ですが通院期間が長くかかります。2カ月近く通院しなければなりません。働き盛りの患者さんでは、通院の時間を作ることが難しい場合もあります。

ご相談者の場合は、再発の可能性は低いと思いますが、ご自身の生活スタイルや治療機器が地域にあること、合併症など、総合的な判断が必要だと思います。

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