PSA再発が心配。放射線治療開始のPSA値の目安は?

回答者・亀山周二
NTT東日本関東病院副院長・泌尿器科部長
発行:2013年11月
更新:2019年4月

  

7年半前に前立腺全摘手術を受けたのですが、PSA検査値が2年半前に0.103、今年7月に0.271と徐々に上昇してきており、PSA再発が心配です。主治医は、PSA値が0.5になったら放射線治療を開始したほうが良いと言っています。一方で、セカンドオピニオンの放射線科医は、0.2を超えたら開始と言います。どちらが正しいのでしょうか?主治医は今後、数値が下がることもあるので急ぐ必要はないと言っていますが……。

(滋賀県 男性 66歳)

0.2超が2回以上連続上昇なら開始

NTT東日本関東病院副院長の
亀山周二さん

前立腺全摘手術後には、最大で約35%の人にPSA再発が見られるとされています。

PSA再発とはCT、MRI、骨シンチなどの画像検査では異常が認められず、自覚症状もない、すなわち臨床的な異常がないものの、血液検査によるPSA検査の数値が上昇した状態です。さらに、一定以上の数値を2回以上連続して示すものを「PSA再発」と言います。

体のどこかに目に見えない微細ながんが存在するかもしれない、という要注意サインと言っていいかもしれません。ただし、それでがんが再発したと確定したわけでもありません。

PSA検査のみが再発の兆候を感知しているということで、これをPSA再発と呼んでいるのです。PSA再発を疑うその一定以上の数値とは、日米欧とも血液1ml当たり0.2ng(ナノグラム)です。質問者の場合、1回この数値を超えているわけですが、次にも連続して超えるようであればPSA再発となります。

質問者は、全摘手術からすでに7年半が経っているそうですが、10年経過してPSA値が0.2を超えないのであれば完治したとみてよいでしょう。ちなみに、PSA再発の約90%は、全摘手術後5年以内に見られるというデータがあります。

仮にPSA再発になっても、画像検査などに異常の現れる臨床的な再発・転移とは同等ではありません。臨床的な再発・転移が発生するのはPSA再発者数の10%で、術後から平均で約8年かかり、その中の一部の人ががん死するまでは、5年ほどの期間があるとされています。同じPSA再発でも、術後5年以降の再発は5年以内の再発に比べがん死するリスクは低いとされています。

ご質問の答えですが、まずPSA再発か否かをはっきりさせ、再発であれば放射線治療を考慮すべきです。現状では、どのPSA値からPSA再発に対する放射線治療を始めるべきか、明確なガイドラインはありません。

ただ、前立腺全摘後にPSA再発をした患者さんたちを対象にした臨床研究によると、0.5以下の値で治療開始をした群が0.5以上の値で治療開始をした群より、治療後の非再発率(再発をしなかった確率)が良好だったという報告があります。これをエビデンス(科学的根拠)として、0.5を超えないうちに放射線治療を開始されるのが良いとされています。

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