手術後に再発率50%と告げられたが
定期的にクリニックでPSA検査を受けていましたが、頻尿の症状がありPSA値が4.3だったので大学病院を紹介されました。生検を受けると、12本中2本にがんが検出され、前立腺がんと診断されました。
病理検査の結果、がんは2つあり、グリソンスコアはそれぞれ9と7でした。幸い転移は確認されませんでしたが、8時間に渡ってダヴィンチで摘出手術を受けました。術後、主治医から再発率は50%と告げられました。手術で切除した断端部(だんたんぶ)は陰性と言われましたが、再発率はそんなに高いものなのでしょうか。また再発した場合どんな治療法があるのでしょうか。
(71歳 男性 東京都)
A 早期がんと思われるため再発率は50%まで高くはない
腎泌尿器外科部長の古賀文隆さん
前立腺がんの術後は、PSAが0.2を超えて上がり続ける場合に、再発と診断されます。ご相談者の場合、早期がんの状態で診断されている可能性が高く、前立腺がん早期の場合、5年生存率はほぼ100%です。リンパ節転移や前立腺外浸潤(しんじゅん)がなく、取り切れたのであれば再発率は50%まで高くはないと思います。
術後PSA再発の診断の問題点は、PSAが鋭敏すぎる検査であるために、再発時に通常の画像診断(造影CTやMRI)を実施してもほとんどの症例で再発部位を捕まえることができないことです。有望な画像診断法として、PSMA PET-CT の治験が行われており、今後本邦でも使用できるようになるかもしれません。
PSA再発の大部分は摘除した前立腺の周囲のがん細胞遺残(いざん)が原因であり、現在は「見切り発車」的に前立腺周囲に放射線治療を行うことで7~8割のケースでPSAの低下が得られます。
最近、放射線治療に短期間のホルモン療法を併用すると、より高い治療効果を得ることができると報告されています。放射線治療にも関わらずPSAが上昇し続ける場合は、適宜画像診断で病巣検出を試みながら、見つからない場合はホルモン療法を行うことになります。長期間経過して緩徐(かんじょ)にPSAが増加して0.2を超える場合は、神経温存手術などで正常前立腺細胞の遺残が原因である可能性も想定されます。この場合は追加治療を行わず、経過をみることもあります。