前立腺がんの小線源療法と重粒子線治療について

回答者●古賀文隆
がん・感染症センター都立駒込病院腎泌尿器外科部長
発行:2021年8月
更新:2021年8月

  

長らくPSA数値は5台が続いていたので、昨年(2020年)7月MRI検査をしました。かなり怪しい腫瘍が見つかったので、生検を行いました。結果、がん細胞が発見されましたが、しばらく様子を見ようということになりました。その後様子を見ていましたが、腫瘍が大きくなっていたので手術を勧められました。なるべく手術は避けたいので小線源療法を考えたのですが、再発した場合のトラブルがあると言われましたが本当でしょうか。また、重粒子線治療が保険適用になっていると聞きましたが、私の場合は適用されるのでしょうか。

(71歳 男性 東京都)

メリット、デメリットについて主治医と相談を

がん・感染症センター都立駒込病院
腎泌尿器外科部長の古賀文隆さん

相談者の場合、低悪性度の前立腺がんと診断されたために即時根治的治療ではなく、病状の悪化を待機して根治的治療を実施する方針(積極的監視療法)が選択されたのだと思います。診断時と較べて腫瘍が増大したようなので、根治的治療を予定されているのであれば、再生検を含めて現在の詳細な病状評価をしたほうが良いと思います。

現在の病状を正確に評価することで、根治的治療として手術療法を選択する場合はリンパ節郭清(かくせい)や神経温存の適応を、小線源や重粒子線を含む放射線治療を選択する場合は外照射の併用やホルモン療法の併用期間など、最適な治療選択が可能となります。転移がなければ、重粒子線や小線源療法を含む放射線治療の適応はあります。

根治的治療後の再発時の治療は、手術療法後の再発の場合、摘除した前立腺の周囲に細胞レベルの病気の遺残が原因であることが多く、救済治療として放射線療法を行うことで完治を期待できます。

一方、放射線治療(小線源や重粒子線治療を含む)後の再発は、前立腺内にがんが再発するケースが多く、その場合、手術療法(前立腺全摘除)で根治は可能です。しかしながら、先行する放射線療法によって前立腺周囲組織がダメージを受ける結果、手術の難度が高くなることと、術後、尿失禁を含む排尿トラブルが重篤化する傾向にあるため、とくに術後のQOL(生活の質)の点で患者さんにとって満足のいく結果を得られない場合が多いと報告されています。

そのため、実際には大部分の症例でホルモン療法が選択されます。前立腺がんに対するホルモン療法(男性ホルモン除去療法)は、男性の健康維持に重要な男性ホルモンを体から除去してしまう治療であるため、男性の健康度を損ねてしまうリスクを伴います。

具体的には、ホルモン療法はメタボの傾向(血中コレステロールや中性脂肪、血糖値の上昇と筋力や骨密度の低下)を強め、長期治療により心血管系の合併症(心筋梗塞や脳梗塞)のリスクが高まることが知られています。言い換えると、男性の健康の維持のためには、ホルモン療法は極力回避すべきとも言えます。

現在の病状を充分に評価した後、各治療のメリット・デメリットについて主治医とよく相談した上で、根治的治療の方法を決定することが重要と思います。

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