ホルモン療法を先送りしたいが
2019年1月にPSA値に異常があり、MRI検査、前立腺生検、骨シンチグラフィ検査を受けました。その結果、中分化、グリソンスコア3+4=7の前立腺がんと診断されました。全摘手術と陽子線治療の選択肢を提示されて、ダヴィンチ(手術支援ロボット)による全摘手術を受けました。
退院後、最初の外来で、病理組織診断の結果、T3aNOMXの前立腺がんで断端陽性と告げられました。以後はPSA定期検査のみでホルモン治療、放射線治療はまだ受けていません。
これとは別に、2015年11月に内視鏡で筋層非浸潤性膀胱がんと上皮がんが見つかり、経尿道的膀胱腫瘍摘出術を受けました。12月に病変部が全て切除されているかどうかの確認のため再度、経尿道的膀胱腫瘍摘出術を受けました。2016年5月から定期的な膀胱内視鏡検査を受けてきましたが、再発は無く、2021年の5月に以後検査は不要と言われました。前立腺がんが発覚したときには、転移ではなく別物との説明を受けました。
PSA値が高くなった場合はホルモン療法と聞いています。がん進行が抑えられても骨粗しょう症や動脈硬化が進むようなので、少しでも先送りしたいのです。現時点で何かできることはないでしょうか。
また、手術をしてもらった医師が他の病院に転出するので、後任の医師からそちらに移るようにと言われましたが、そうしたほうがいいのでしょうか。私としては設備が充実しているいまの病院がいいのですが。
(64歳 男性 北海道)
A 骨粗しょう症や動脈硬化の進行のリスクは高くない
腎泌尿器外科部長の古賀文隆さん
前立腺全摘除後に、PSAが0.2ng/mLを越えて上昇を続ける場合に「PSA再発」と定義されています。全摘の病理組織所見やPSAの上昇速度などから、摘除した前立腺周囲組織に細胞レベルのがん遺残が想定される場合には、根治を目的に前立腺摘除部位に対する救済放射線治療を考慮します。
ご相談者の場合、切除断端陽性であるためPSA再発を来たす場合は、救済放射線治療を第1選択肢として考えることになると思われます。その場合、病状に応じて短期間ホルモン療法(男性ホルモン除去療法)を併用することもあります。ホルモン療法を6カ月や1年と期間限定で行う場合、ご相談者が心配されている骨粗しょう症や動脈硬化進行のリスクはそれほど高くはないと思います。
救済放射線治療は精度の高い放射線治療装置で実施することが望ましく、その観点から今後の診療を継続する病院について、担当医とよくご相談されるのがよろしいかと思います。