グリソンスコアに違いがある場合の治療は

回答者●古賀文隆
がん・感染症センター都立駒込病院腎泌尿器外科部長
発行:2022年11月
更新:2023年5月

  

2年前、PSA値が15だったので、大学病院でMRI検査を受け、前立腺肥大と言われました。今年の検査ではPSA値20と高くなったのと頻尿が加速したので、前立腺肥大手術(PVP)で実績のある病院に行き、CTやMRI検査でがんはなかった(前立腺肥大は80g)が、PVPはがんがないことを確認することが必須とのことで、針生検(18本)を実施。グリソンスコア7(3+4)陽性1本(1mm)T1cNOMO、骨シンチ等検査で転移がないことを確認。

がん専門病院にセカンドオピニオンに行ったところ、「GS7ではなくGS6(3+3)で、手術の必要なし。まずは内服薬で頻尿などの治療を行って、がんは監視療法を勧める」と言われました。全摘手術は避けたいため、近日中に重粒子線治療のための診察を受ける予定です。

そこでご相談ですが、グリソンスコア判定の相違があった場合、どうしたら良いでしょうか(サードオピニオンを求めるとか?)。まずPVPで前立腺肥大の問題を解決したいのですが、「小さいがんがあっても、PVP手術しても問題ないか」アドバイスいただけますでしょうか。

(66歳 男性 東京都)

治療方針に大きな影響はない

がん・感染症センター都立駒込病院
腎泌尿器外科部長の古賀文隆さん

グリソンスコア(GS)の病理医間の相違は、とくにGS3と4との間でしばしば遭遇します。腺管構造に融合があるとGS4と診断されますが、GS3の腺管の屈曲部が接線方向に切れていると、あたかも腺管が融合しているように見えることが一因であると認識しています。

がん専門病院でのサードオピニオンも選択肢かもしれませんが、GS3+4であっても生命を脅かす可能性の低い小さな低悪性度のがんと捉えられるので、治療方針に大きく影響を与えないと思います。ご相談者の場合、PSA値が20前後なのでリスク分類は中リスク(PSA10~20)ないし高リスク(>20)となります。

重粒子線を含む放射線治療を行う場合、中リスク以上のがんに対しては男性ホルモン除去療法(ADT)を併用します。通常、中リスクでは6カ月間、高リスクでは2~3年のADTを併用します。ADTにより前立腺肥大の縮小効果と症状改善がある程度期待できるので、PVPは待機されたほうが良いと思います。

また、PVPはがんが含まれている可能性のある肥大症組織をレーザーで蒸散させてしまうため、病理学的に評価できないため、がんを専門とする泌尿器科医の立場からはあまり推奨できません。

放射線治療の場合、ADTで一時的に肥大症の症状が軽快したとしても、治療後の経過で排尿症状が再び悪くなる可能性があります。ご相談者のように前立腺肥大症の症状でお悩みの患者さんに対して、私はがんと肥大症を同時に根治できる治療法として前立腺全摘除を推奨しています。そして実際に、殆どの患者さんが術後気持ちよく排尿できるようになったと喜んでおられます。

術後尿失禁を心配されて手術を回避したいとお考えの患者さんは多くおられますが、当院でロボット支援手術を受けた患者さんの場合、局所進行がん症例を含む全症例で、術直後から尿失禁があってもごく少量という患者さんが75%程度、3カ月経過すると95%程度の患者さんで回復しています。

ご相談者の場合、小さな低悪性度のがんなので、勃起神経温存に加え、尿禁制に重要な尿道括約筋の周囲組織を極力触らずに、尿道括約筋を最大限温存することも可能な病状と思われます。これらの手術手技を適用した患者さんの場合、術直後から尿失禁があってもごく少量という方が90%以上、3カ月経過するとほぼ全例で回復しています。勃起反応の回復も1年以内に8割の症例で認めています。術後尿禁制の治療成績は、術者・施設・手術手技などによって異なるため、手術をお考えの場合は担当医とよく相談して下さい。

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