高度前立腺生検を受けるべきか

回答者●古賀文隆
がん・感染症センター都立駒込病院腎泌尿器外科部長
発行:2023年2月
更新:2023年2月

  

80代男性です。2022年11月の血液検査でPSA値が4カ月前の検査のときの5.1から6.5と上昇していました。CTやMRI検査でも白い影が認められ、医師から「前立腺がんの可能性がある」と告げられました。医師からは超音波画像とMRIの画像を融合した画像を見ながら病変を採取して調べる「生検」をする高度な前立腺生検を勧められましたが、この生検を受けるべきでしょうか。なお、私は10年前に心筋梗塞を患いステントを挿入していて腎機能も低下しています。

(82歳 男性 宮城県)

経過観察が一般的

がん・感染症センター都立駒込病院
腎泌尿器外科部長の古賀文隆さん

MRI・超音波融合画像ガイド下前立腺標的生検は、MRIでがんが疑われる病巣を標識して超音波画像に立体的に融合することで、標的病変に確実に針を刺して組織を採取できる生検方法です。2021年度までは先進医療として行われていましたが、2022年度からは正式に保険収載されました。とくに超音波では見えにくい小さな標的病変の場合に有効と考えられています。

相談者の場合、生検を受けた結果、仮に前立腺がんと診断されたとしてもいわゆる早期がんと思われます。早期前立腺がんに対する根治的治療(手術あるいは放射線治療)は、一般的に期待余命10年以上の方が対象とされています。早期前立腺がんは進行が緩徐であり、通常は10年以内に生命を脅かす病状に進行しないことが理由です。

逆の言い方をすると、期待余命が10年未満の方の場合、前立腺がんが暴れ出す前に寿命を迎えることが多いため、根治的治療をせずに経過観察が選択されることが一般的です。そのため、早期がん疑いでも生検を行わず、年に1回PSAを測定して経過をみて、前立腺がんの何らかの症状が出て治療が必要という時点で、生検で診断を確定するという選択もしばしばなされます。

健康な日本人男性の場合、人口統計上の期待余命10年の年齢は77-8歳なので、相談者(82歳)の場合、暦年齢上は期待余命が10年未満となります。しかし、暦年齢で期待余命が10年未満であっても、肉体年齢は暦年齢より若い方が大勢おられますので、今後の方針については主治医と相談されることをお奨めします。

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