前立腺がんの再発。経過観察、疼痛緩和治療を選びたい

回答者:赤倉 功一郎
東京厚生年金病院 泌尿器科部長
発行:2010年4月
更新:2013年12月

  

前立腺がんの再発の対応で、悩んでいます。病歴は、以下です。2001年9月、生検(組織の一部を切りとって、病理組織学的に診断を確定すること)で前立腺の右側に前立腺がんが見つかりました。2002年2月、リュープリン(一般名酢酸リュープロレリン)注射6カ月後に根治的前立腺全摘除術。病理検査で、低分化、被膜外浸潤若干ありと診断。2003年3月、骨盤内膿瘍による高熱で、1カ月間入院。その後、外来通院を続けました。PSA値は、手術前34で、術後1年目0.011に低下。その後、2009年4月0.056、9月0.070で推移し、2010年1月0.089に上昇しました。担当医から「がんの局所再発が濃厚のため、0.1になったら、リニアック放射線治療64グレイをするように」と言われましたが、放射線をあてることに、疑問と怖さを感じています。2009年1月を含む過去3回のCT(コンピューター断層撮影装置)検査では、異常なし。リンパ節、骨への転移もなしです。質問は、以下です。身体を痛めるような放射線治療、ホルモン治療、抗がん剤治療という延命治療ではなく、このまま経過観察し、PSA値、CT、MRI(核磁気共鳴映像法)、骨シンチグラフィ(骨の画像を撮影する検査)検査を継続し、転移がわかれば、疼痛緩和治療で最後を迎えるという方法を選ぶことは間違っているでしょうか。それとも、再発時の放射線治療は、副作用があっても受けるべきでしょうか。放射線治療で、完治するのでしょうか。副作用の直腸出血や膀胱障害などを、治す方法はあるのでしょうか。放射線の治療効果を高めるために、放射線治療の2カ月前と放射線治療中および治療後の2カ月間ホルモンを投与する「2+2療法」をしたほうがよいでしょうか。

(北海道 男性 72歳)

A 転移がわかったらホルモン療法は行うべき

経過観察をして、転移がわかったら治療をするという方法も誤りとは言えません。ただし、「転移がわかれば、疼痛緩和治療で最後を迎える」のはおすすめしません。少なくとも、転移がわかった時点でホルモン療法は行うべきです。ホルモン療法は、副作用が少なく、効果の優れた治療法です。痛みにも、有効です。ホルモン療法をせずに、モルヒネ(医療用麻薬)などの疼痛緩和治療を行うことは賛成できません。

再発時の放射線治療についてですが、一般的には、PSA値が0.2~0.4になったら、PSA再発と診断して、放射線治療を行います。

手術後、再発を待ってから放射線治療を始めるというのであれば、PSA値が0.2まで待つというのがスタンダードです。

PSA値0.1での放射線治療は、通常よりも早いと言えます。ただ、最近では、被膜外浸潤などのある人には、再発を確認しなくても予防的に放射線治療をしたほうがよいというデータも出ていますので、手術後に、再発予防を目的にした術後補助療法的な放射線治療を行うこともあります。ですから、PSA値が0.1になったら放射線治療を考えるというのは、1つの選択肢と言えます。

放射線治療は、直腸出血や膀胱障害などのリスクを伴います。ただし、放射線治療を行うことで、がんが治ることが期待できます。手術後、再発時の放射線治療は、一般的には単独で行います。ホルモン療法を併用したほうがよいのかどうかについては、結論は出ていません。

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