前立腺切除以外の治療法は?

回答者:赤倉 功一郎
東京厚生年金病院 泌尿器科部長
発行:2008年8月
更新:2013年12月

  

71歳の父のことですが、最近、PSA値が6と高めでした。紹介先の病院で針生検を受けました。6本のうち1本に腫瘍が見つかりました。グリソンスコア 6とのことです。前立腺切除を勧められていますが、父は、術後の副作用などを気にして、少し迷っているようです。前立腺切除の手術のほかに、治療法はないのでしょうか。できれば、薬だけで治したいと思います。

(島根県 女性 43歳)

A 小線源療法など5つの治療選択がある

PSA値が6で、グリソンスコア 6とのことですから、前立腺がんでは、いわゆる低リスク群に入ると思います。71歳という年齢を考えると、治療法としては(1)無治療経過観察、(2)放射線治療の小線源療法、(3)放射線治療の外照射、(4)手術、(5)ホルモン療法の5つの治療選択があります。

(2)(3)(4)は根治を目的にした治療であり、治癒が可能です。(1)は3カ月ごとにPSA値を見ながら経過観察して、PSA値が上昇したら、手術などの治療を行います。(5)はがんを小さくする治療効果はありますが、完全な治癒は困難です。前立腺がんを治したいのでしたら、(2)(3)(4)のなかから、その副作用、治療期間、費用、麻酔の方法などを考えて、治療選択をしてください。

ちなみに、(2)(3)の放射線治療の副作用としては前立腺に近い直腸や膀胱の粘膜が損傷される恐れがあります。直腸障害では、出血や排便痛、下痢などがあります。(4)の副作用としては、尿失禁、勃起障害などがあります。治療期間は、(2)は2泊3日程度の入院、(3)は1カ月半~2カ月の外来通院、(4)は2~3週間ほどの入院が必要です。

薬だけで治したいとのことですから、(5)のホルモン療法が該当しますが、前述したように、完全に治すことは難しいと考えてください。副作用は、性機能障害、ホットフラッシュ、骨そしょう症などがあります。ホルモン療法を行ってから再発すると、手術や、放射線治療ができなくなる可能性があります。逆に、手術や、放射線治療を行ってから再発したときは、ホルモン療法を行うことができます。

71歳と比較的若いですから、治癒を目的にした(2)(3)(4)のいずれかを選択したほうがよいと思います。しばらくの間、PSA値をチェックしながら(1)無治療経過観察をしていくのもよいかも知れません。

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