小線源療法の永久留置法と一時留置法、どちらがよいか

回答者:島田 誠
昭和大学横浜市北部病院 泌尿器科教授
発行:2008年6月
更新:2013年12月

  

ステージBの前立腺がんと診断されました。PSA(前立腺特異抗原)の値は7ナノグラム/ミリリットルで、グリソンスコア(がんの悪性度)は6です。手術や放射線治療など、治療法について、主治医から説明を受けました。そのなかの1つ、小線源療法を選択しようと思っていますが、永久留置法(低線量率小線源療法)と一時留置法(高線量率小線源療法)の2つがあることをあとから知りました。雑誌には、治療自体は永久留置法のほうがずっと楽であると書かれていますが、どちらがより望ましいか、アドバイスをお願いします。また、心配が2つあります。1つは、もし再発した場合には、手術ができない点についてです。小線源療法を受けた後に再発した場合には、どのような治療法があるのでしょうか。もう1つは、小線源療法を受けた後、放射線を出すカプセル(シード線源)が肺などのほかの臓器に移動してしまう可能性についてです。こうしたことも起こりうるという書き込みをインターネットで見たのですが、本当でしょうか。本当なら、その発生頻度はどれくらいでしょうか。また、もしそうなった場合、問題はないのか、問題があるなら、適切な対処法があるのか教えてください。

(神奈川県 男性 66歳)

A 一時留置法は体への負担が大きい。永久留置法が一般的

小線源療法が実施されるようになった当初は、一時留置法も行われていましたが、近年の実施例は少なく、昨今は主に永久留置法が行われています。

一時留置法があまり行われなくなったのは、治療がつらく、痛みが激しいことが主な理由です。麻酔はしますが、会陰部から線源の入った針を何本も刺して、3日間ほどベッドの上で過ごさないといけません。その間のQOL(生活の質)はかなり厳しいのが現状です。

一方の永久留置法は、麻酔をして、針を1度打ち込めば、普通に歩くことができるなど、身体的な負担や制約はほとんどありません。そうしたこともあり、永久留置法と一時留置法の二者択一なら、永久留置法を勧めます。

ただし近年、高リスク(PSA値は20ナノグラム/ミリリットル以上、グリソンスコアは8以上)の前立腺がんにおいては、一時留置法が見直されています。

高リスクの患者さんに対しては、一時留置法が2日間で行えるようになり、その場合、1回あたり9グレイ、2日間で12グレイの放射線を一気にかけ、さらに45グレイほどの外照射を追加します。この治療法が高リスクの前立腺がんに有効であると近年考えられています。

小線源療法を行った後に再発した場合の治療法は、局所再発と遠隔再発に分けて考えます。

局所再発であれば、「放射線の体外照射」「ホルモン療法」「放射線の体外照射+ホルモン療法」の3つの治療法が考えられます。

遠隔再発であれば、ホルモン療法を主体とした治療になります。放射線治療は局所に対する治療ですから、遠隔への再発には効果が期待できません。

ちなみに、小線源療法だけでなく、放射線の体外照射でもホルモン療法でも、それらを受けて再発した場合には、通常、手術をすることはできません。

シード線源が体内を移動した場合についてご心配されているようですが、こうしたことは確かに起こることがあります。割合まではわかりませんが、それほど珍しいことではありません。

移動する先は肺です。前立腺から静脈の血流に乗って、肺に飛びます。これによって、胸痛や呼吸困難などの障害が起こることは通常ありません。

また、シード線源と一緒にがん細胞が飛ぶことも通常ありませんし、仮にがん細胞が肺に行っても、シード線源から放射線が出るため、がん細胞は発育しないと考えられます。

加えて、仮にシード線源が肺に飛んでも、治療はとくにしません。シード線源が移動することに関しては、ご心配される必要はないでしょう。

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