針生検は必ず受けるべきか、痛くない方法はあるか
78歳の父のことでご相談です。近くの総合病院で、「PSA(前立腺特異抗原)値が高くて、前立腺がんの疑いがあるため、針生検が必要です」との説明を受けました。親戚の人から「針生検はかなり痛い」と言われました。針生検は必ず受けなければいけない検査なのでしょうか。痛くない針生検の方法はないでしょうか。
(愛知県 女性 49歳)
A 針生検は不可欠。痛くない方法もある
PSAが高くて、前立腺がんの疑いがあるとのことですから、がんかどうかの正確な診断が必要です。この診断に、針生検は不可欠です。前立腺がんは、画像検査上、がんがどこにあるのかわからない場合がほとんどです。
胃がんの生検は、がんが疑われる場所を狙って、内視鏡でつまんで切除しますし、肝臓がんでも、がんの疑いのある場所を生検します。しかし、前立腺がんでは、多くの場合疑わしい場所がわかりません。そこで、経直腸エコーガイドによるランダム・システマティックス・バイオプシー(無作為系統的多数カ所生検)という針生検を行います。
エコーで、前立腺を見ながら、たとえば、右側の奥とか、左側の奥とか、膀胱寄りとか、前立腺のいろいろな場所から均等に細胞を取ってきて調べます。一般的には、10カ所以上の針生検を行います。当院では、12カ所の針生検を実施しています。
次に、生検時の痛みについてですが、痛くない方法で生検を行うこともできます。
針生検に用いる針はやや太めで、バネの力でパチンと切り取るようにして、生検をします。1カ所ぐらいならあまり痛くはありませんが、最低でも10カ所以上行いますから麻酔なしでは痛みを感じます。
針生検の痛みは、アプローチの方法によっても異なります。アプローチの方法は、針を直腸から刺す経直腸法と、会陰から刺す経会陰法とがあります。経直腸法は、それほど痛くはないため、無麻酔で行うこともあります。感染症や、発熱を起こしやすいとも言われています。会陰法は、皮膚を通して行うために、痛みますから、麻酔が必要です。どちらの方法がよいかどうかの結論は得られていません。
麻酔をするかどうかや、麻酔の方法については、病院によって異なります。経直腸法の場合は、それほど痛くないため、外来で、無麻酔や局所麻酔で行うこともできます。腰椎麻酔や全身麻酔で行う病院もあります。経会陰法は、針を皮膚から入れるため、通常無麻酔では行いません。外来で、局所麻酔で行う病院もありますが、1泊2日もしくは2泊3日の検査入院をして、腰椎麻酔で行うこともあります。当院では、原則として、経会陰法を腰椎麻酔で行っています。腰椎麻酔なら入院検査中の痛みは、90パーセント以上の方でありません。生検をする時間は30分間ほどです。ただし、麻酔が切れたときは、多少違和感はあるかと思います。
このように、痛くない生検を行うことができますので、生検のアプローチ法や、麻酔の方法について、担当医とよく相談してください。