開放手術とミニマム創内視鏡下手術のどちらがよいか
T2a期の前立腺がんと診断され、腹腔鏡手術を勧められました。しかし、数年前、大学病院で前立腺がんの患者さんが腹腔鏡手術のミスで亡くなったことが頭にあったため、その場では返事を保留にしました。後日、ある大学病院でセカンドオピニオンを受けたところ、開放(開腹)手術とともに、ミニマム創内視鏡下手術の提案も受けました。ミニマム創内視鏡下手術は「比較的簡単で安全な手術なうえに、傷口も小さい」という説明を医師から受け、この手術法にしようと思っていますが、一方では、本当に大丈夫なのかという不安も払拭できずにいます。私の希望は、より安全な方法で、より確実に治ることです。私のなかでは腹腔鏡手術はほぼ除外していますが、開放手術とミニマム創内視鏡下手術のどちらがよりよい治療法ですか。
(東京都 男性 66歳)
A 一般的には開放手術を勧める
ミニマム創内視鏡下手術は下腹部を5~7センチ程度、切開し、内視鏡や特殊な器具を使いながら行う手術です。手術の方法は、基本的には開放手術とほとんど変わりません。開放手術に比べた場合、大きな利点は傷口が小さいことです。開放手術では通常、10~15センチ程度、切開しますから、それに比べると、かなり小さな傷口ですみます。ミニマム創内視鏡下手術は現在、先進医療の1つに認定されています。
腹腔鏡手術は2~3センチの傷口を数カ所開けて、そこから内視鏡などを入れて行う手術です。侵襲(体のダメージ)が小さいため、手術の翌日に退院することもできます。
開放手術は最も一般的な手術法で、前立腺がんのなかでは、われわれ泌尿器科医が最初に習得する手術法です。
手術の難易度を見ると、高いほうから、腹腔鏡手術、ミニマム創内視鏡下手術、開放手術の順になります。侵襲は逆に、大きいほうから、開放手術、ミニマム創内視鏡下手術、腹腔鏡手術の順です。
ご相談者は医師から「ミニマム創内視鏡下手術は比較的簡単で安全」という説明を受けたようですが、それは「腹腔鏡手術に比べて」という意味合いだと思います。開放手術と比べるのなら、ミニマム創内視鏡下手術よりも開放手術のほうが一般的には簡単で安全です。
選択のポイントは、患者さんが何をいちばん希望するかです。傷口が小さく、体へのダメージが小さいことを求めるのか、とにかく安全な手術を希望するのか……といったことをよく考えることが大切です。ご相談者は「より安全な方法で、より確実に治ること」を希望されていますから、開放手術を選択してよいのではないでしょうか。
もしミニマム創内視鏡下手術を選ぶのであれば、先進医療の認可を受けていて、ある程度以上の症例実績のある医療施設をお選びになるとよいでしょう。また、医療費の一部は保険が利かず、自費になる部分があります。