お尻などに痛みが。転移ではないか

回答者:赤倉 功一郎
東京厚生年金病院 泌尿器科部長
発行:2007年10月
更新:2013年12月

  

2003年の12月ごろから腫瘍マーカーのPSA値が4~5ナノグラム/ミリリットル(以下略)を示すようになり、おととしの秋ごろから、お尻のあたりに、痛みを感じるようになりました。2006年2月に病院の泌尿器科を受診すると、「下から数えて3番目の早期の前立腺がん」と診断されました。その後、入院して、小線源療法を受けると、PSAの数値は下がり、2007年7月の検査では2.51でした。しかし、お尻の痛みはいっこうに治りません。それに加えて、2006年1月からは、両足の裏も痛くなったため、別の病院の整形外科を受診し、鎮痛剤や抗リウマチ薬、筋緊張緩和剤などを処方してもらいました。また、メンタルクリニックを受診し、入眠剤と抗うつ剤も処方してもらいました。こうした薬を飲んでも、相変わらず痛く、日常生活に差し障ります。自分では、前立腺がんが転移しているために痛いのではないかと思うのですが、泌尿器科医は「転移はない」と言い、整形外科医は「わからない」と言います。原因がわからないため、近々、大腸の検査を受ける予定です。痛みを取る方法はあるでしょうか。また、この痛みの原因は何なのでしょうか。

(山梨県 男性 64歳)

A PSA値などを考慮。転移の可能性はかなり低い

PSA値は前立腺がんの診断をするのにとても有用な腫瘍マーカーです。前立腺がんの可能性を考えた場合、4未満は基準値以内、4~10未満はグレーゾーン、10以上は可能性が高いと考えます。また、PSA値10未満で転移をきたすことはほとんどありません。ご相談者の今年7月のPSA値(2.51)を見ると、基準内で、がんの増悪の可能性は少ないと考えられます。

前立腺のがん細胞の悪性度を判断する「グリソンスコア」〔前立腺がんの分化度(悪性度)を表す〕に関する記述がないため、より詳しい病状はわかりませんが、PSA値や早期の前立腺がんという診断から考えると、私も担当の泌尿器科医と同様の意見で、転移の可能性はほとんどないと思います。

では、お尻や足の裏がなぜ痛いのかというと、抗リウマチ薬を処方されていることからすると、1つにはリウマチによる痛みである可能性が考えられます。この点は整形外科医に確認されてみてはいかがでしょうか。

お尻の痛みに限っていえば、慢性骨盤痛症候群(慢性前立腺炎を含む)の可能性も考えられます。慢性骨盤痛症候群になると、鼠蹊部や会陰部、さらにはお尻のあたりが痛くなることがあります。慢性骨盤痛症候群の原因ははっきりとはわからない場合が少なくありません。

また、小線源療法を行っていることで、慢性骨盤痛症候群の症状が増悪する可能性はあります。ただし、お尻の痛みが小線源療法を行う前に起きていることを考えると、小線源療法の副作用で痛みが起きているとはいえません。

リウマチであれば抗リウマチ薬などを、慢性骨盤痛症候群であれば泌尿器科医から適切な治療をお受けになって下さい。繰り返しますと、お尻や足の裏の痛みの原因が前立腺がんの転移である可能性は、とても低いと思います。

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