前立腺がん術後に再燃。放射線治療は必要か

回答者:高橋 悟
東京大学大学院 泌尿器科助教授
発行:2005年7月
更新:2013年12月

  

takahashi[1]

私は生検で前立腺がんと診断され、半年前に全摘出手術を受けました。ステージBの低分化がん(細胞の分化の度合が低いがん)です。早期がんだったため、術前術後もつらい症状はありません。しかし、腫瘍マーカーのPSA(前立腺特異抗原)が0.04から0.15と上がり、再燃が疑われ、主治医から放射線治療を勧められています。放置しておくと他臓器への転移のリスクが大変高いと説明を受けました。しかし、放置した場合と治療した場合の生存期間などを聞いても、明確な答えはありませんでした。副作用を伴う放射線治療を受ける意味は本当にあるのでしょうか。また、新聞に強度変調放射線治療のことが載っていましたが、これはどういう治療でしょうか。私には適応になりませんか。

(千葉県 男性 73歳)

A PSA値と、そのダブリング・タイムで治療選択は変わる

ステージBで低分化がんとのことですから、再発のリスクは高分化型(増殖スピードが遅い)よりも明らかに高く、PSAの上昇などに注意を払う必要があります。一般的にはPSAのダブリング・タイムが重要です。これは、PSAの値が倍になるのに要する期間のことです。このダブリング・タイムが3~6カ月以内だと進行が早いと考えて、治療が必要です。

もう1つ、PSAが0.4以上になった場合に通常再発と考えます。あなたの場合、PSAのダブリング・タイムはわかりませんが、PSAが上昇したとは言っても0.15ですから、低い数値です。また、0.15に上昇しても、その後、横ばいをたどるケースがしばしばあります。そこで、2~3カ月ごとにPSAを測定し、連続して3回ともPSAが上昇して、PSA値そのものが0.4前後になった場合に、治療を考えるようにしてもよいと思います。現時点では、「すぐに治療しなければいけない」という状態ではないと考えられます。

治療法としては、放射線治療と内分泌療法があります。ダブリング・タイムがゆっくりしている場合には局所再発が多いため、放射線治療がよいと思います。局所再発で放射線による治療をがっちり受ければ、完治できる可能性もあります。逆に、ダブリング・タイムが短くて、6カ月ごとに倍に上昇しているような場合にはすでに手術した段階で転移があったと考えて、内分泌療法を選んだほうがよいと思います。数週間はこれだけで十分にコントロールできます。

なお、強度変調放射線治療は、一般的には前立腺摘出後のケースには行いません。あなたの場合、適応にはならないと思います。

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