前立腺がん治療に伴う副作用は少ないか

回答者:篠藤 誠
放射線医学総合研究所 重粒子医科学センター病院医師
発行:2012年1月
更新:2013年11月

  

PSA検診で前立腺がんがわかりました。病期はB期で、手術あるいは放射線治療のどちらかを選択して治療をすることになりました。どちらの治療も効果はほとんど同じということなので、副作用が軽い治療を受けたいと思っています。重粒子線治療は副作用が少ないと聞きました。ほかの治療と比較して、本当に少ないのでしょうか。

(茨城県 男性 59歳)

A 他の治療法より副作用は少ない

前立腺がんの治療後に起こる副作用は、その治療法によって違っています。

手術では失禁などの排尿障害、勃起障害などが起こる場合があります。失禁は術後のリハビリで回復することがありますが、勃起障害の回復は難しいようです。

一方、重粒子線治療を含む放射線治療では治療中に頻尿や切迫尿意などの放射線膀胱炎症状が起きますが、治療後には徐々に改善していきます。ですから治療直後の体への負担は手術に比べてとても少ないということがいえます。

しかし、放射線治療の場合には治療後数カ月から数年後に直腸からの出血や血尿、尿道の狭窄による排尿障害を生じることがあります。これは前立腺が直腸や膀胱に近いため、その一部に放射線が当たってしまうために起こりうることで、正常組織に放射線が当たる範囲が狭いほど、副作用が出る頻度は少なくなります。

重粒子線は通常の放射線治療よりも照射の範囲を非常に限って当てられるので、通常の放射線治療よりも副作用を少なくできます。また放射線治療では男性機能の温存が期待できる点も手術より優しい治療といえます。ただし、勃起障害は避けられても精液量の減少、血液が混入するといった射精障害は高率に起こります。

手術と放射線の効果が同じ程度であるといっても、それは病期に加えて、グリソンスコア(病理診断によるがんの顔つき)やPSAなどの前立腺がんのマーカーなどから判断される総合的な病状によります。

B期でもがんの質によっては選択される治療法が異なる場合があり、たちの悪いがんは手術でとることを強く勧められることが多いのですが、殺傷能力の高い重粒子線治療を選ぶことで、通常の放射線治療よりも高い治癒率が期待できると考えられます。

PSA=前立腺特異抗原。前立腺から分泌される糖たんぱく質で、前立腺がんの腫瘍マーカーとして用いられる

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